人種・LGBT差別禁止を明記 世田谷区で条例成立

【時代の正体取材班=石橋 学】国籍や民族を理由にした差別や性的少数者(LGBT)への差別を禁じる東京都世田谷区の条例が2日、区議会本会議で可決、成立した。罰則はないが、同区によると、多文化共生に関する条例で人種差別の禁止を明記したものは珍しい。  一人一人の違いを認め合い、人権を尊重する地域社会の実現をうたう「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」は4月から施行される。

 「何人も、性別等の違いまたは国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる不当な差別的取り扱いをすることにより、他人の権利利益を侵害してはならない」と禁止規定を盛り込んだ。対象には差別の一形態であるヘイトスピーチも含まれる。

 その上で、性的少数者への理解促進と日常生活の支援、国籍・民族が異なる人々への偏見や差別の解消など、差別根絶に向けた10項目の基本施策の実施や、行動計画の策定を義務づけている。

 差別の被害相談・救済機関として苦情処理委員会を設けることも明記。申し立てに対して区長は「必要に応じて適切な措置を講ずる」と定める。区によると、こうした人種差別全般に関する諮問機関もほとんど前例がないという。【解説】「反差別」規範示す一歩 締約国に「差別を禁止し、終了させる」義務を課す人種差別撤廃条約に加入しながら、差別を禁じる法律が日本にはない。自治体が国に先んじて差別の禁止を条例で明記した意義は大きい。

 保坂展人区長は「この条例に書いていることは共通理解であるはず。画期的とみられることが驚き」との言い回しでこの社会の欠陥を指摘する。引き合いに出すのが2016年7月に相模原市内で起きた障害者大量殺傷事件。「障害者であることを理由にしたヘイトクライム(憎悪犯罪)がいけないということが、きちんと説明できない社会になっている」。差別を動機とした犯罪を非難する声明を政府はいまだ出していない。その姿勢が反差別規範の決定的な欠如を物語る。

 東京五輪の馬術競技会場でもある同区にあって、保坂区長は人種や性別などあらゆる差別を禁じた五輪憲章を引き、「排除ではなく存在を認め合い、尊重するという考えは世界のスタンダード」と強調、「各自治体で議論が深まることを望む」とも語った。

 人種差別を巡っては16年に大阪市のヘイトスピーチ抑止条例、国のヘイトスピーチ解消法と、差別言動に限ったものではあるが、法という規範が示され始めてきた。ヘイトデモの被害にさらされている川崎市においては、世田谷区が「スタンダード」として示した差別の禁止を最低ラインに、刑事規制などさらなる前進を条例で示すことが求められる。

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