学びたい気持ちに応え続ける 自主夜間中学「あつぎえんぴつの会」 厚木市

前文部科学事務次官の前川喜平さんも同会のボランティアスタッフとして生徒の学びを支えている。2月8日には「憲法について」の特別授業も行われた

 毎週木曜日。市内中町で自主夜間中学「あつぎえんぴつの会」が学習の場を開いている。時間は午後12時30分〜午後3時まで。毎回10人ほどの生徒らが学ぶ。年齢層は10代〜80代、外国籍の生徒もいる。同会代表の岩井富喜子さんは同会の魅力を「学習要求を持ちづづけている人がいて、それに寄り添い支援する人がいる。ともに学ぶ喜びを味わえること」と話す。今注目の夜間中学を取材した。

 自主夜間中学「あつぎえんぴつの会」は戦争で義務教育が未修了になった女性の長年の「学びたい」という気持ちに応える形で2013年11月に発足。当初は場所の確保も厳しい中、月2回の授業を行っていた。2014年、生徒は2人に。新たに生徒になったのは、複雑な家庭環境の中、「中学を卒業したものの、勉強はわからず、友だちもできなかった」という女性だった。あつぎえんぴつの会は「学びたい」という気持ちを持ち続ける一人ひとりの気持ちと、それを支える元教員らのボランティアスタッフの気持ちで紡がれてきた。同会の存在が少しずつ知れるにつれ、生徒もスタッフも増え、学習の会場も厚木市の施設を無料で借りられるようになった。昨年11月には夜間中学を知ってもらうためのイベントも開催し大きな注目を集めた。

今改めて注目される夜間中学の存在

 神奈川県は昨年末から1月にかけて中学校夜間学級の設置ニーズや希望する学習内容についてアンケート調査を行った。その結果が2月9日に公表され、厚木市をはじめとした県央地区での夜間中学へのニーズが高いことが明らかになった(詳細は県ホームページに公開されている)。

 このアンケート結果を受け、佐藤知一県議が現在開会中の県議会で、夜間中学の設置について「県教育委員会としてどのように考えるのか」と一般質問。教育長からは「総合的に設置検討を進めたい。施設の確保については県教委としてどう支援・協力していくか検討していく」と答弁を得ている。また、1月には、厚木市議会の議員ら9人が川崎市の夜間学級(市立西中原中学校)の視察も行っている。この視察を提案した新井啓司市議が3月5日(月)の市議会で夜間中学に関するアンケート結果を受けての課題として、今後の県への働きかけや他市町村との連携について一般質問も行う予定だ。現在、全国の公立夜間中学は8都道府県25市区に31校。県内には横浜市と川崎市にそれぞれ1校あるのみ。今後のなりゆきに注目したい。

 ※あつぎえんぴつの会への問合せや授業見学は代表の岩井さん【携帯電話】090・2238・0837へ。

© 株式会社タウンニュース社