祖先は戦国武将 鷹19歳捕手が目指す“打倒甲斐” 「正捕手になるつもり」

ソフトバンク・九鬼隆平【写真:藤浦一都】

九鬼水軍を率いた戦国武将・九鬼嘉隆の末裔、2016年ドラ3九鬼が激白

 自らを取り巻く状況は、目まぐるしく変わっていった。まだ高卒2年目の19歳。開幕1軍もどうか、という立ち位置から、気づいてみたら、開幕メンバーの2番手捕手候補の筆頭になっていた。

 2年連続の日本一を狙う王者ソフトバンクの九鬼隆平捕手。熊本の秀岳館高から、2016年のドラフト3位で入団した“強打の捕手”だ。高校時代はキャプテンを務め、3年時にはセンバツ、選手権ともに甲子園4強に進出。U-18アジア選手権を戦う侍ジャパンU-18代表でもキャプテン、そして4番を任された。入団時には、九鬼水軍を率いた戦国武将・九鬼嘉隆の末裔であることも脚光を浴びた。

 今春の宮崎キャンプ。その九鬼は、昨季1軍で併用された高谷裕亮、甲斐拓也、そして栗原陵矢の先輩3人とともにA組に組み込まれたのだが、そのキャンプで、チームを揺るがすアクシデントが起きた。まず高谷が右肘の違和感で離脱。2月19日に福岡市内の病院で検査を受け、その診断結果が右肘関節炎であったと20日に発表された。その日の夕方には、特守中の栗原が左肩を脱臼する故障を負った。

 高谷は27日に内視鏡による右肘の関節形成手術を受け、全治3か月と発表された。栗原も手術となれば全治6か月ほど、再発リスクの残る保存療法でも全治3か月を要すると見られている。いずれにしても2人はシーズン開幕時は不在となることが確実となった。

 正捕手は昨季急成長を遂げた甲斐拓也が担うことになるが、その先、2番手、3番手捕手が問題となる。オフに山下斐紹を楽天へトレード、鶴岡慎也がFAで日本ハムに復帰したこともあり、1軍経験のある捕手が甲斐以外にいない状況となってしまった。

高谷&栗原が相次いで負傷、支配下捕手は4選手のみ

 現状で支配下登録されている残る捕手は九鬼と、3年目の谷川原健太、張本優大の3人だけ。A組には育成選手の堀内汰門も加わっており、この堀内の支配下昇格の可能性もある。見る限りでは2年目の九鬼が、まず2番手に入ってくることが有力だろう。

 26日にキャンプを終え、27日からは「球春みやざきベースボールゲームズ」を戦ったホークス。初めてA組で過ごした1か月を九鬼は「勉強になることが多かったです。ベテランの人とかに細かいことを教えてもらったり、たくさんの1軍で投げられている投手たちのボールを受けることができて、すごく勉強になりました。1軍レベルの選手というのは、基礎のことが当たり前にできること、当たり前を当たり前に出来るものなんだと感じました」と振り返る。

 九鬼にとって、今の状況は大きなチャンスである。アピールに成功し、経験を糧に成長できれば、先輩たちが戻ってきたとしても、そのまま1軍の座にい続けることが出来るかもしれないのだ。だが、九鬼本人の胸の内は違う。19歳が目指すのは、あくまでも“打倒・甲斐拓也”であるという。

 甲斐に続く2番手捕手として掴む開幕1軍には見向きもしない。「僕の中では2番手キャッチャーになるつもりではいません。あくまでも正捕手になるつもりでやっています。2番手を目指したら、そこで終わってしまうと思うので。正捕手が目指すところ。拓也さんを抜くまで、そのつもりでやっていきます」。なんとも力強い言葉ではないだろうか。

 オープン戦で生き残りかける19歳は「特別なことをやるわけじゃない。やってきたことを出せるようにやるだけだと思っています」。2年目捕手は自身にとって重要な、そして大きな経験値を積めるであろう1か月間を戦っている。

(Full-Count編集部)

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