いのち輝く季節

 今年のうれしいニュースの一つに数えられるだろう。長崎ランタンフェスティバルは25周年の節目に106万人を集め、過去最高の人出だった。枕ことばを「冬の風物詩」としながら、最高気温が20度を超える陽気の中で閉幕▲と思ったら、夜は嵐。真夜中に窓から外の様子をうかがうと、風雨は地面に波打って、ドーンと鳴った雷の光がほんの一瞬、山容を浮き上がらせて▲少々荒っぽいが、天が花芽やら虫やらに、目を覚ましなさいとはやし立てているようでもあった。きょうは啓蟄(けいちつ)、冬ごもりの虫が地上に這(は)い出す頃という。あの風雨と雷は、春の開幕ショーにも思えてくる▲季節を分かつ前線が列島の上空にあり、冷たい冬の空気と暖かい春の空気が前線を挟んでせめぎ合っている-と、これは気象予報士のテレビ解説の受け売りだが、なるほど、冬と春が押し合うのを寒暖の差でもって肌身に感じる頃である▲「蟻(あり)穴を出(い)づ」は春の季語という。3月もまだ上旬、ごそごそ出てきた虫たちは、時に寒さも覚えつつ「春の空気」が勝る日を待つのだろう。私たちも、また同じく▲まど・みちおさんの「アリ」という詩にある。〈いのちだけが はだかで/きらきらと/はたらいているように見える〉。穴を出たあとの、小さくてむき出しの命が輝く春はそこにある。(徹)

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