【検証18年度上期の国内建材市場】〈(上)条鋼建材〉五輪控え需要ヤマ場入り

 2020年の東京五輪・パラリンピック関連施設や東京都心での再開発案件、全国各地でのインフラ整備など、豊富な建設計画や世界同時好況の波に乗って国内の建設用鋼材の需要もヤマ場を迎えようとしている。ピークが始まる18年度上期を前に、品種や地域別に今後の需要動向を検証する。

鉄骨ファブ

 H形鋼や一般形鋼、平鋼、コラムといった条鋼建材品種の動向を占う上で欠かせないのが鉄骨ファブリケーターの動向だ。国土交通省の建築着工統計を基に試算した鉄骨需要量(換算鉄骨量)は推定で17年暦年で520万トンと前年比3・5%増の伸びを見せた。17年度(17年4月~18年3月)も「前年度の510万トンを超える530万トン前後」(田中進・鉄骨建設業協会会長)とプラスの見通しが大勢を占める。

 鉄構事業を手掛ける商社や大手ファブなどによると、18年度上期の仕事量はグレードを問わず高水準を維持しそうだ。五輪関連施設や開催前の完成を目指す再開発案件、ホテル、人手不足が叫ばれる物流施設など需要は旺盛とされる。ファブの中には「年内はもう予定が詰まり、新規受注をお断りしている」と語る業者も多い。

 ただ昨今の資材高や人手不足を背景に、建築主の中にはプロジェクトの着工を20年以降にずらす動きも散見される。鉄骨需要量(換算鉄骨量)も昨年4月から今年1月までの累計では前年同期比2・0%増とプラス基調を保つが、伸び率は月を追うごとに縮小傾向。関係者からは「安全対策の強化や設計段階での遅れもあり、超高層ビルを手掛けるSグレードにやや一服感がある」(商社幹部)との指摘も出てきた。

 また店売り市場とメーカー直送との勢いに差が出ている点も懸念される。特約店が得意とする着工床面積2千平方メートル未満の中小建築物向けの鉄骨需要量は、1月の時点で3カ月連続でダウン。大規模建築物向けも下がってはいるが、1万平方メートル以上の超大型建築物が全体に占める割合は3割を超過。特約店関係者は「仕入れ値が上がった分を転嫁しようにも主立った案件は直送に取られている。細かな案件を積み重ねるしかない」と、時流に乗れないもどかしさを吐露する。

 それでも中堅以下の鉄骨ファブには、繁忙感が高まるにつれて大手ファブでは手が回らない案件が回ってくるとの期待感は根強い。「五輪関連をはじめ、完成時期は死守しないといけない。仕事が分散すれば、流通も含めて需要は今より向上するはずだ」(ファブ幹部)と前向きに捉えている。

 流通にとって当面の懸念材料は、鋼材市況の高騰を筆頭に工程遅れ、輸送需給のひっ迫、慢性的な人手不足だ。需給環境が変動する中で、いかに受注をこなしていくかがカギとなりそうだ。

鉄筋施工・加工

 異形棒鋼など鉄筋用小形棒鋼の需要動向の影響を受けるのが鉄筋施工業者だ。国交省の建設労働需給調査でも3月は不足感が強い。特に土木の鉄筋工が少なく、建築も若干足らない状況という。

 東京都鉄筋工事業協同組合(東鉄協、理事長・新妻尚祐新妻鋼業社長)の1月労務状況調査でも、必要な鉄筋工の総数は前回(17年11月)より395人多い5498人に拡大。不足人員も55人に増えた。現場稼働率も3月、5月とも平均99%と高く、会員会社からは「5月ぐらいから稼働率が上がりそうで、人数確保が必要」との声が出ている。

 一方で需要指標となる国交省建築着工統計を見ると、マンションなどを含む鉄筋コンクリート造(RC造)の数値に勢いがない。着工床面積は昨年11月から3カ月連続で前年同月比でマイナスを記録。今年1月は昨年に五輪選手村が着工した影響でほぼ半減したが「これを考慮しても平年より少ない」(商社幹部)レベルという。

 伸び悩みの要因として指摘されるのはマンション販売価格の高騰だ。不動産経済研究所によると、全国の発売戸数は17年暦年で前年比0・5%増の7万7363戸で、平均価格は4739万円と過去最高を記録した。「首都圏では5千万円を超え、一般のサラリーマン世帯では手を出しにくい価格帯。今後の着工計画に影を落とすかもしれない」(商社筋)との懸念も出ている。

 戸建て住宅や小型店舗の基礎向けに工場で部材を先組みする住宅基礎鉄筋メーカーの出荷量も伸び悩みが指摘される。国の指導で金融機関のアパート建設向け融資が抑制傾向に転じており「需要減を見込んだ住宅メーカーが納品価格を下げるよう通達してきた」(メーカー幹部)といい、規模は限られるが鉄筋用小棒の需要量を押し下げる可能性が浮上してきた。

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