イチロー入団会見の主な一問一答 本音とウィットが入り交じる人間的魅力

マリナーズへの復帰となったイチロー【写真:盆子原浩二】

6年ぶりにマリナーズ復帰「目が潤んでいるように見えるとしたら…」

 マリナーズは7日(日本時間8日)、マーリンズからフリーエージェント(FA)となっていたイチロー外野手と正式契約を交わしたと発表した。イチローは、米アリゾナ州ピオリアにある球団キャンプ施設内で、ジェリー・ディポトGM、スコット・サービス監督、代理人のジョン・ボッグス氏らと入団会見に出席。「いずれまたこのユニフォームを着てプレーをしたいという気持ちが、心のどこかに常にあったんですけど、それを自分から表現することはできませんでした」と本音を明かす一方で、「目が潤んでいるように見えるとしたら、時差ボケの影響だと思います」とお得意のウィットも披露し、会場に集まった日米合計60人の報道陣から爆笑を誘う場面もあった。

 主な一問一答は次の通り。

――2012年にトレード移籍してから5年半。選手としてどう変わったか?
「いろいろなことを経験しました。この5年半。また耐性が強くなったと思います。耐性というのはいろいろなことに耐える能力、これが強くなった。明らかに強くなったと感じています。選手としての能力……に関しては、今はそれが数字で分かる時代なんで、皆さんの方がよくご存じだと思いますけど、その点で明らかに5年前と違うと言えると思います」

――50歳まで現役を続けたいという話を聞いたが今の気持ちは?
「これ、皆さん、よく50歳までという話をされることが多いと思うんですけど、僕は“最低”50歳といつも言っているので、そこは誤解しないでほしい」

――FA市場の動きが遅い中で、アメリカでのキャリアは終わったと思ったことはあったか?
「いろいろなことを考えました。ただ周りも心配してくれる声はたくさん聞いたんですけども、僕自身の状態としては泰然とした状態だったと思います。それがなぜかは分からないんですけど、自分が経験してきて、よかったこと、そうでなかったこと、たくさん経験した上で、そうなったのか。なぜそうなったのかは分からないですけど、ただ泰然という状態は、自分がプレーヤーとしても人間としても、常にそうでありたいという状態、目指すべき状態ではあったので、そういう自分に出会えたことはとてもうれしかったです」

マリナーズに復帰すると思った一番の根拠とは…

――達成したいと思っていることは?
「2001年にメジャーリーグでプレーすることが決まった時に考えたのは、もう自分のことしか考えられなかったです。まず結果を残さないと、この世界でやっていけない。それは当然のことですけど。それから17シーズンが過ぎて、18年になるわけですけど、もちろん自分ができるパフォーマンス、たくさんあります。僕自身のためにやりたいこともあります。ただ当時と違うのは、今、マリナーズが必要としていること、僕がそこに力になれるのであれば、もう何でもやりたい。そういう気持ちですね。僕が今まで培ってきたすべてをチームに捧げたい、そういう覚悟です」

――マルティネス、カノ、フェルプスら元チームメイトと再びプレーすることについて
「ロビー(カノ)とはもちろん、またプレーしたいと、彼がニューヨークを離れてからいつも思っていましたし、エドガー(マルティネス)がコーチになった時も、やっぱりいつか一緒にやってみたい。(デービッド)フェルプスに関しては、なぜか僕が追いかけているという状態なんですけど、おそらくそんな風になるんじゃないかと、それはちょっとした根拠になるんですけど。今回シアトルに戻るんじゃないかという一番の根拠は、確かにフェルプスがいたことですね」

――シアトルについて
「先ほども少し出ましたけど、5年半の間、飛行機から見えるシアトルの街だったり、セーフコフィールドが僕にはすごく、ホームなのにホームではない。近いのにすごく遠く感じるっていう存在になっていたんですね。今回こういう形で戻ることができて、また見える景色が違うんだろうなって。そこにある当たり前のようにあったものが、まったくそうではない、特別なものであったということを、この5年半で僕は感じていました」

――目が潤んでいるようで感慨が伝わってくる。改めてマリナーズ復帰への思いは?
「こういう会見の場合、目が潤んでいることはメディアの方は大好きみたいですけど、おそらくこれ目が潤んでいるように見えるとしたら、時差ボケの影響だと思います」

注目の大谷翔平との対戦「できれば僕もピッチャーで」

――ファンは大谷とイチローの対戦を楽しみにしているが、その思いは?
「まだ翔平がプレーしているところを実際に見たこともないので、まず見てみないと。誰が見ても、世界一の才能と言ってもいいんだろうということをよく聞きますし、見たことはないですけど、僕もそう思います。そんな選手と対戦することっていうのは、野球の醍醐味の1つだと思うんですよね。それは必ず実現させたいと思うし、できれば僕もピッチャーで対戦したいなって思います」

――チームのために何でもするという気持ちは18年目で初めて生まれた?
「そのチームでプレーする時に、そのチームのために全力を尽くすのは当然のことです。どのチームでもそうです。最初の3年くらいを除けば。3年は結果を出さないと消えていくだけなので。それは違いますけど。やっぱりこういう状況になって、特に年齢のことっていうのは、みんながなぜか気にするところでもあるので。例えば40歳以上の選手は採用しないという考え方だったら、自動的に省かれるんですから。でも、今は少し違う野球になってきた時代だと思うんですよね。その中で、印象としては、ケージの中で一番大きく育ってしまった犬を優しく迎えてくれたような。それに対してすべてを捧げたい、忠誠心が生まれるのは当然のことだと思いますね」

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2