GSユアサ、「金属シリコン電極」開発 リチウム電池、3倍の高エネルギー密度に

 GSユアサ(本社・京都市南区、社長・村尾修氏)は、大型電池の実用化で課題の多い金属シリコンを主体とする負極の高エネルギー密度化と長寿命化の両立を実現したと発表した。電気自動車に搭載されるサイズの電池で、従来のリチウムイオン電池の約3倍となる高エネルギー密度化技術の改良に成功した。

 負極材に用いる金属シリコンは、理論容量が非常に高く(4200mAh/g)、資源量が豊富であることから、リチウムイオン電池の新規材料として多くの研究が行なわれてきた。ただ、金属シリコンは充放電時の体積変化が約400%と非常に大きいため、充放電を繰り返す過程で微粉化および孤立化(電極中の活物質が充放電に寄与しない現象)という劣化が生じる。

 その結果、充放電効率およびサイクル寿命特性が乏しく、特に長期使用が前提となる電動化車両用の大型電池では、金属シリコン電極の実用化は困難とされてきた。

 「金属シリコンを用いた電極の好適な粒子径および電極組成などを見出すことでそれらの特性を改善、従来の約3倍となる高エネルギー密度化技術の改良に成功した」(同社)。

 この金属シリコン電極は、今後の技術革新と普及が見込まれる全固体電池へも適用が可能な技術。今後は、この金属シリコン電極のサイクル寿命特性をさらに改良し、2025年ごろの電動化車両への適用を目指す。

 GSユアサは、車両の電動化に求められる電池の高エネルギー密度化技術の開発を通じ、低炭素社会の実現に貢献していく方針。

 成果の一部は3月9~11日に東京理科大学葛飾キャンパスで開催される 「電気化学会第85回大会」(主催・電気化学会)で発表される予定。

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