春季キャンプ特別対談、西武の弁慶と義経、山川穂高×源田壮亮
昨夏、チーム59年ぶりとなる怒とうの13連勝をマークした埼玉西武。リーグ制覇とはならなかったが、パ・リーグに旋風を巻き起こした。
その象徴的な存在が、同時期に1軍再昇格を果たした山川穂高内野手だ。8月に記録した9本塁打、9・10月の10本塁打はともにリーグ最多で、2か月連続して月間MVPを獲得した。
一方、源田壮亮内野手は夏場に苦しんだが、フルイニング出場を果たし、球団新人記録を次々に打ち立てた。チームが積年の課題としていた遊撃のポジションを強みに変えて、新人王を受賞している。
両者とも確かな足跡を残したからこそ、今季は真価が問われる。お互いのこと、チームのこと、倒すべきディフェンディングチャンピオンの強さについて…。迎えた勝負の1年を前に、余すことなく語ってもらった。
――お互いのことを、どのように見ていますか
山川「守備はめちゃくちゃうまいですよね。すごくうらやましいです。足も速いし」
源田「あれだけパワーがあったら楽しいだろうなと思います。うらやましいですね」
――山川選手のようにホームランが打てたら…
源田「気持ちいいだろうなと思いますね」
――2人にとって今季は重要なシーズンになります。目標を聞かせてください。
山川「僕はまだレギュラーの立場を完全に取っている立場ではないと思うので、まずはレギュラーを取ることを今年の目標にしています」
源田「今年は開幕からもう1回、ショートで全試合フルに出ることを目標にしています」
――数字の目標はいかがでしょう。
山川「ホームランの数は言っていないですが、OPSは1.000を超えたい。長打率と出塁率を足して1.000は意識しますね」
源田「1年間フル出場して、失策1桁以内というのが目標です」
――辻発彦監督は、源田選手に50盗塁を期待しているようです
源田「そうですね(笑)、はい、頑張ります」
侍ジャパンで感じたこと、松井稼復帰の影響
――目標達成には、試合に多く出ることが前提。コンディション面で気を付けていることはありますか
山川「僕はないですね。寝ること。ちゃんと寝ること」
源田「間違いない。大事」
山川「昨年、僕は(シーズンの)半分しか出ていません。2軍を含めると120試合ぐらい出ていますけど(1軍で78試合、2軍では39試合に出場)、一軍でやるのはプレッシャーや身体の疲れが違うので。よく寝て、しっかり食べる。ストレスを溜めるのがよくないので、僕は節制をあまりしません」
――源田選手は昨年、体重を減らさずキープしておきたいと言っていました
源田「はい。無理矢理増やそうとはしていなくて、減らさないことだけ考えていました。トレーニングで体重が増える分には、それでいいという感じです。去年は1年間やってみて、夏場に身体がきつくなって、実際に数字も落ちました。なので、今年は疲労をとるために、苦手な水風呂を試してみようかなと思っています」
――2人は昨年、侍ジャパンに招集されました。得られたものを教えてください。
山川「他のチームの選手がどのような思いでプレーしているのか、どのように準備をしているのかを知ることができました。試合では勝たなきゃいけないというプレッシャーがあったので、それがしんどかったです。その中で、プレーできたのは良かったなと思います」
源田「他球団の選手の、試合までの準備の仕方が参考になりました。あの緊張感の中で試合ができたのはいい経験に、絶対にプラスになると思いましたね」
――今年は百戦錬磨の松井稼頭央選手がチームに復帰しました
山川「僕はまだ、バッティングのことを聞いたりはできていません。ただ、あの年齢で、しっかり走ったり、しっかり打っているのを見ると、すごく参考になりますよね」
源田「野球の技術について、見て感じたことは聞くようにしています」
――源田選手は今季、かつてショートのポジションで鳴らした松井稼選手と比較されることもありそうです。山川選手はチーム内のライバルに勝たなければなりません。
山川「僕は結局、そこで勝たないと試合に出られない。勝つために、それを言うようにしています。比較されるのは、入団した当時からそうでした。やっと、スタートは同じにできる道ができたと思います。あとは、この1年が勝負になりますね」
源田「もともと、あまり同じポジションのライバルのことは、昔から気にしないタイプなので。自分がやるべきこと、やらなきゃいけないことを考えながら、プレーするだけかなと思っています」
ソフトバンクに感じる強さ、「試合中に松田さんがすごすぎて『おっ』と思う」
――福岡ソフトバンクについてもお伺いしたいのですが、どのようなところに強さを感じますか
山川「僕は……声です。もちろん、(プレーも含めて)全部ですけど。声も結構、すごいなと思いますね。試合中に松田さんがすごすぎて、『おっ』と思います。1点差で勝っていても、やはり松田さんを中心に『いくぞ、オラー!』みたいな(笑)。メットライフドームでファーストを守っていると、よく聞こえてきますね。すごいです」
――強いチームは、プレー以外のところも違う
源田「そういう感じのチームが多いですね」
山川「諦めないというか。そういう部分は、僕たちができていないわけではないと思いますけど、福岡ソフトバンクはそれが一層、強いのかなと」
源田「勝っているのに、勝っている気がしなくなってきますよね。相手が勝っているのかなと思うぐらい。暗くならないですよね」
山川「暗くならない」
――声以外では、いかがでしょう
源田「それはもう、ピッチャーもバッターも」
山川「ピッチャーは(力を込めて)『いい~』ですよね」
――そこをお2人が崩していかないと、チームは昨季より上に行けないと思います
源田「お願いします」
山川「フフフ。多分、源がかき回してくれるんじゃないですか。僕は、最後の最後にちょろっと打ちます」
――では、今季のお互いへ、期待する数字を挙げてもらえますか
山川「(打率)3割です、3割」
源田「えぇ~」
山川「去年は?」
源田「2割7分ジャスト」
山川「じゃあ、2割7分1厘で。2割7分より上」
山川への要望は40発、100打点
――3割でなくても、よろしいですか
山川「3割って相当、難しいですよ。去年は(パ・リーグに)2人しかいないですし」
――源田選手は山川選手にどれぐらいホームランを打ってほしいですか。
源田「40」
山川「わははは。40ねぇ~。20…、25本」
源田「打点ですかね」
山川「打点は浅村さんがいるからね。でも、ホームランを打ったら打点も付いてくる。打点は絶対、大事ですね」
――いくつ稼いでもらいましょう
源田「100(小声)」
山川「100打点は、いってみたいですね」
レギュラー奪取へ向けて熱く燃え盛る山川と、いつもと変わらない涼しい表情の源田は実に対照的だ。山川は今、リーグを代表する強打者たちと同じ土俵に上がっている。昨季後半の大爆発がパスポート。競争から逃げるつもりは毛頭ない。持ち味を見失うことはなく、全力でぶつかっていく心構えだ。
達成よりも困難な継続に挑戦する源田は、柳に風のようでいて、しっかり地に足が付いている。走攻守のバランスはもとより、周囲にペースを乱されることなく、自らの円の中で勝負する術を心得ている。自身を信じ抜く力と、自己を客観視する力。相手の長所を消すのが巧みなプロの世界で生き抜くには、どちらも大切な素養だ。
プレースタイルとアプローチは違えども、向上したい気持ちは同じ。自らを見つめる強さを持つ2人が、きっとチームを押し上げる。
〇山川穂高(やまかわ・ほたか)/内野手
1991年11月23日生まれ。26歳。沖縄県出身。176センチ108キロ。右投右打。
小学生で野球を始め、中学時代は硬式野球チームで全国大会出場を経験。中部商高校では通算27本塁打を放ち、富士大学在籍時には日本代表で4番も務めた。第38回日米大学野球選手権大会では、後の米ドラフト全体1位指名投手マーク・アッペルから満塁弾を放つ。2013年ドラフト2位で埼玉西武に入団。翌14年の6月21日(横浜DeNA戦)に一軍デビューし、フレッシュオールスターでは4番に座った。16年に49試合で14本塁打、17年に78試合で23本塁打を放つなど、自慢の長打力を披露。ピアノが趣味で習字8段。愛称は“アグー”。
【昨季成績】78試合72安打23本塁打61打点 打率.298 長打率.661 出塁率.420
【通算成績】142試合112安打39本塁打97打点 打率.272 長打率.612 出塁率.379
〇源田壮亮(げんだ・そうすけ)/内野手
1993年2月16日生まれ。25歳。大分県出身。179センチ73キロ。右投左打。
ソフトボールをプレーした小学生時代を経て、中学から野球を始める。大分商業高校卒業後に進学した愛知学院大学では、4年時に主将としてリーグ優勝を経験した。トヨタ自動車では、1年目に都市対抗野球でチームの初優勝に貢献する。2016年ドラフト3位で埼玉西武に入団。翌年3月31日(北海道日本ハム戦)の開幕戦に遊撃でスタメン出場すると、新人では史上4人目となるフルイニング出場を果たした。155安打、10三塁打、37盗塁は、いずれもチームの新人記録。オールスターにも補充選手として選出され、新人王にも輝いた。好きな言葉は「一日一生」。
【昨季成績】143試合155安打3本塁打57打点37盗塁 打率.270長打率.351 出塁率.317
(Full-Count編集部)