【検証18年度上期の国内建材市場】〈(下)地方の概況〉新千歳空港拡張に3万トン 九州、主要駅でホテル建設ラッシュ

北海道

 北海道地区は新年度も非住宅建築で豊富な着工件数が見込まれる。TPPや畜産クラスター事業で牛舎をはじめとした畜産・農業施設やインバウンド関連でホテルやリゾート施設、物流関係、公共建築に加え、札幌市内の再開発案件も旺盛だ。

 中でも鉄骨約2万3千トン、鉄筋約7千トンが使用される新千歳空港国際線旅客ターミナルビルの拡張工事が本格化。一方、ファブリケーターの生産能力や人手・運輸に絡む問題も深刻化が予想され、その対応が受注や販売面でのカギを握る。

東北

 岩手、宮城県の津波被災地の震災復興事業は着実に進み、土木鋼材需要は復興道路・復興支援道路向けの軽量土木、コンクリート二次製品中心に移行する。新規の着手箇所はピークを越え、復興事業予算の減少とともに土木関連需要は緩やかに後退する。福島県の原子力災害被災地では帰還者受け入れに向けた除染廃棄物処理施設など関連整備が進行。日本海側は目玉事業が少なく、土木鋼材需要は太平洋側に比べて精彩を欠く。

 建築需要は物流拠点に加えて、今夏着工予定の東芝メモリによる岩手県北上市での半導体製造棟新設をはじめ、自動車、精密機械、食品関連の設備投資が好調。鉄骨加工需要は首都圏案件と重なり、地場ファブの山積みは高位だ。鉄筋コンクリート造(RC造)復調の中、基礎鉄筋需要も増加が期待される。

信越

 新潟地区は新潟市で再開発がいよいよ本格化。これまで休止していた施設跡に新コンセプトでの街づくりが始動する。2月末には古町通7番町地区の複合施設(地下1階、地上12階)が着工。低層階に銀行、市役所の一部業務等が入居し、2020年3月竣工予定。旧中央卸売市場跡には分譲マンション・住宅、商業施設が集積する新潟初のテーマタウンが整備される。

 三条市、長岡市、小千谷市では工業団地の造成を計画中。周辺企業の関心が高い。

北陸

 北陸地区の鉄骨加工業界は、大手ファブでは地区内外の案件で秋頃までの山積みを確保。年末まで受注残を抱える向きもあるなど、昨年を上回る繁忙が継続する見通しだ。

 富山県では学校の新築や銀行の建て替え、大型商業施設の増築、物流倉庫などが見えており、ここ数年低迷していた県内需要が上向くのは間違いないとみられている。石川県では金沢市内のホテル案件がいまだ活発。金沢駅西口で計画されている外資系ホテルが目玉物件で、鉄骨使用量が約5千トン。年度末ごろから材料手配が始まる見通しだ。福井県でも銀行の建て替えやアルミ材工場などの計画がある。製造業関連の工場案件が着実に増えている印象だ。

中部

 中部地区では新年度以降も鉄骨重量で万トン級の大型物流拠点の新設が計画されているほか、地場に波及しやすい中小規模の設備投資が継続的にあり、半年先まで案件を抱える地場Mグレードファブも見られる。厚板溶断業者からは「ゼネコンは実需増に伴う加工能力不足を懸念し、発注を前倒しする傾向にある」との声が聞かれ、建設向け加工は今後、繁忙感が強まる様相が出てきた。

 また金属屋根・壁材として使用されることが多いガルバリウム鋼板生地材は、一部で入荷に時間を要するように。供給面でもタイト化が進みそうだ。

関西

 関西では「夏場以降、鉄骨工事が集中し、年末まで繁忙状態が続きそうだ」とみる向きが多い。足元やや落ち着いているH形鋼やコラムの動きについても「大型連休明け頃から上向いてくるのでは」との見方だ。中小規模のホテルや物流倉庫、工場などが中心となりそう。

 RC造についても「鉄骨造(S造)シフトでしばらくさえなかったが、足元の受注残は増えている」とのこと。19年10月には消費税率が10%に上がるため、分譲マンションの前倒し需要が期待される。

中国

 中国地区では耐震化・老朽化対応に伴い、ビルや市庁舎など公共建築物の建て替えやホテル、大型物流施設、再開発案件と今後も新規案件が期待される。地場ファブの大手は関東、関西案件が積み上がり、繁忙が高まっている九州からの流入もある。不需要期の1~2月の荷動き・引き合いは流通の期待値より多少弱めだったとの見方だが、徐々に好転が予想される。

 JR広島駅前再開発は最盛期を過ぎたが、岡山市中心部では大規模再開発が相次いで始動する。

九州・沖縄

 九州・沖縄地区の建材市場は昨年後半にまとまった買いが入った反動で様子見ムード。ただ、今後は大型再開発案件の本格始動が見込まれており、18年度上期の気配は再び上向く見通しだ。

 九州の17年の外国人入国者数は前年比32・8%増の494万1468人。6年連続で過去最高を更新しており、JRの主要駅周辺ではホテルの建設ラッシュが続いている。このため有力ファブは既に年内の仕事量を潤沢に抱えている。17年度の九州地区の鋼材受注量は450万トンを超える見通しで、18年度も数%の伸びが期待されている。(この特集は中野裕介、伊藤健、斉藤孝則、小室慎、杉原英文、藤田英介、齊藤直人、橋川渉、小田琢哉、馬場雅明、新谷晃成が担当しました)

© 株式会社鉄鋼新聞社