不都合がございましたら

 たわいない話だが、会社の机の引き出しに好きなお菓子を“常備”する習慣がある。いつもは見ることもない菓子の袋の注意書きに、なんとなく目を通す。「製品には万全を期しておりますが、万一不都合がございましたら」取り換えます、とある▲言うまでもなく、「不都合」を感じるとすれば、それは製品を買った方なのだが、別の例もあるらしい。役職を降りたい、お取り替えくださいとその人が申し出たのは、どうやら自分にとっての不都合を察知したためとおぼしい▲森友学園の国有地売却を巡る文書の書き換え疑惑で、野党から責められていた前理財局長の佐川宣寿国税庁長官が辞任した。なぜ、あんなに安く国有地を売ったのか-と追及されてもかわしてきたが、ここに来て、文書疑惑で国会を混乱させた責任を取ったという▲おや、と首をかしげる向きもあるだろう。文書の書き換えはあったか、なかったか。関与した人物は限られていて、調べれば程なく分かるはずなのに▲それはうやむやのまま、幕引きに走った感は否めない。混乱させた責任を取る-一面では正しくとも、一面でしか正しくない▲このままでは砲撃がやまない、内閣に責任が及びかねない、と忖度(そんたく)したかどうか。想像を重ねても、不都合の中身は不明のままのお取り替えである。(徹)

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