米朝首脳会談へ 「世界の安全保障、安定化への第一歩」長崎大核廃絶研究センター・広瀬訓氏

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の広瀬訓(さとし)副センター長(56)は、5月末までに実現する見通しの米朝首脳会談について「世界の安全保障の安定化に向けた第一歩」と評価した。双方の思惑や核情勢の展望について聞いた。

 -会談をどう位置付けるか。

 世界の核情勢で特に緊張が高いとされる一つが米朝関係。軍事衝突ではなく交渉で問題解決を図る動きは、世界の安全保障の安定化に向けた第一歩。象徴的な手段として世界に示される。非核化の道筋が立てば、東アジアを含め世界の核使用のリスクは低くなり、核不拡散に直結する。

 -米朝双方の思惑は。

 トランプ政権は11月の中間選挙を見据えている。オバマ前政権が成し遂げられなかった北朝鮮の非核化を実現すれば、支持率上昇につながる。北朝鮮側の最大の関心は金正恩(キムジョンウン)体制の維持。経済制裁の影響や米国の軍事力を考え、核に固執せずに自国の安全を確保する狙い。不可侵条約の締結を求めるだろう。両国の利害が一致しているため非核化で話がまとまる可能性はある。

 -北朝鮮の非核化が実現した場合、世界の核情勢にどう影響するか。

 北朝鮮が核放棄によって自国の安全確保に成功した「モデル」となれば、他の国は核を持つ正統性がなくなり、疑問の目を向けられる。他国に核放棄を迫った米国が自国の核を捨てないことへの矛盾も国際社会に広がるだろう。非核化の実現は、核保有国への間接的な圧力となり得る。

 -日本政府の姿勢をどう見るか。

 日本は北朝鮮と接触する手段を持っていないため、最初から朝鮮半島の安全保障問題について主体的に関わる気はなかった。現時点で当事者ではなく、同盟国の米国の方針に追随するしかない。北朝鮮の軟化方針は圧力の成果だと言うしかないのだろう。

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