【MLB】「お帰りなさい、イチ」―復帰戦のイチローに地元TV局も終始スポットライト

大歓声を浴び打席に立ったマリナーズ・イチロー【写真:盆子原浩二】

地元TVはオープン戦中継で“イチロー大特集”、解説は「彼には力が残されている」

 マリナーズに復帰したイチロー外野手が11日(日本時間12日)、レッズ戦でオープン戦初出場を果たした。「1番・左翼」で出場し、3打数無安打2三振。初ヒットこそ生まれなかったが、本拠地シアトルのテレビ局「ROOTスポーツ」では異例の“イチロー大特集”を展開した。

 帰ってきた背番号51――。シーズン中もマリナーズの公式戦を中継する「ROOTスポーツ」では、レッズ戦の中継開始直後から“イチロー祭り”がスタートした。

 まずは、ライトスタンド脇からカートに乗って登場したサングラス姿のイチローに、テレビカメラがズームイン。客席からも大歓声が沸き上がったが、実況はすでにハイテンションだった。

「51番がラインナップに復帰です。2058日ぶりに、イチローがマリナーズのユニフォームを実戦で着ます。お帰りなさい、イチ。彼は観衆に挨拶しました」

 ダグアウトの奥に消えるまで、カメラはイチローの姿を追い続けた。2012年7月22日の敵地レイズ戦を最後にヤンキースへトレード移籍し、チームを去った背番号51。地元テレビ局も6シーズンぶりの凱旋を大歓迎した。

 スタジオの解説者、元投手のビル・クルーガー氏は「彼はマリナーズのユニフォームを着る運命だった。マーリンズでも、ヤンキースでもない。すごく似合っている。彼は44歳。45歳に向かっています。世界は彼に残されたものはないと考えているかもしれない。でも、私は彼には力が残されていると思う。本当に、本当にモチベーションは高い。今季イチローにはいいことが起こると思っています」とメジャー最年長野手の今季の活躍に期待を寄せた。

MLB公式サイトも特集「これは現実なんだ。イチローが戻ってきたんだ!」

 中継ではその後、ラインナップを紹介。実況は「これは気に入った! イチローはレフトで1番に入った」と熱い口調で紹介。スタンドには背番号51のユニフォームを着たファンの姿も目立ち、「ほとんどイチローの日という感じです」と感慨深そうに話すなど、話題の中心は常にイチローだった。

 1点を追う1回裏。記念すべき第1打席を迎えると、球場に「ナンバー51、イチロー・スズキ!」とアナウンスが鳴り響くと、ファンはスタンディングオベーションで英雄の凱旋を歓迎した。実況は「通常のカクタスリーグの17試合目以上、大騒ぎ、そして、ワクワク感。イチローがその理由です」と球場の盛り上がりを噛みしめるように伝えた。

 イチローは相手先発フィニガンと対峙。1ボール2ストライクからファウルで粘り、7球目でフルカウントに持ち込んだ。解説者のマイク・ブロワーズ元内野手が「本当にいい打席だ」と思わずため息をついた直後、イチローは高め速球を見逃した。四球を確信したようだが、判定は見逃し三振。それでもブルワーズ氏は「打席に慣れるまでさほど時間はかからないでしょう。その理由は彼のスタイルと、素晴らしいハンド・アイ・コーディネーションにあります」と太鼓判を押した。

 また、MLB公式サイトの動画コーナー「Cut4」も「イチローは日曜日にカクタスリーグのデビューを果たし、そこには多くの感情があった」と、この日の球場の盛り上がりについて伝えた。「これまでのところやや静寂気味だったスプリングトレーニングだったが、シアトルのユニフォームを身に纏ったイチローを連れ戻したことで、状況は少し変わったのだ」としている。

 記事では、背番号51が打席に入った際に「イチローコール」が沸き上がったことに言及しつつ、遊撃手テイラー・モッターの「(これまでは)静かだったんだけど、イチローをちょうど獲得したことが少し景気づけになったんだ」というコメントも紹介。「フェリックス・ヘルナンデスとロビンソン・カノは、試合に向けてウォームアップしている最中に喜びで満ちていたようだった」と、ハイテンションだった投打の軸2人の様子も記している。

 そして、最後は「我々も、イチローの復帰に少々感情的になっていた。これは現実なんだ。イチローが戻ってきたんだ!」と締めくくっている。イチローの“帰還”でマリナーズが変わり始めた。

(Full-Count編集部)

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