【米国のアルミ関税導入】日系圧延メーカーの海外戦略に影響も 東南アなどで「中国材と競合激化」懸念

 米国が「通商拡大法232条」に基づきアルミ製品輸入に対して10%の関税導入を決めたことで、日系アルミ板・押出メーカーの海外展開への影響が懸念され始めた。関税の対象がアルミ地金や二次合金だけでなく、板材、押出材、線材、鋳鍛造品が加わったことで、米国への直接輸出に影響が出るのは必至。しかしそれ以上に懸念されるのは、米国から締め出されたアルミ製品が日系圧延メーカーの展開している東南アジアなどへあふれ出す事態だ。

 日本のアルミ圧延品の17年輸出量は30万51トン。米国向けはこのうち約10%の3万1240トン程度。日系圧延メーカーから圧延品として米国に向かっているものはそれほど多くはなく、「仮に追加関税が導入されたとしても、大きな影響にはならないのではないか」(圧延メーカー筋)との指摘が聞かれる。なお数量自体は輸出超過にあるものの、貿易額でみれば米国から日本へは単価の高い航空機材料が多いことから米国の貿易黒字となっている。

 一方で、中国材が世界にあふれ出すという懸念は非常に強い。すでに中国立地の圧延メーカーも対応を進める。一例を挙げれば、欧州資本の圧延メーカーは中国工場から米国に自動車熱交換器用板材を輸出していたが、米政府が先行して実施したアルミ箔への関税導入政策を受けて、米国ユーザーへの供給を中国材から欧州材に切り替えた(今回の関税策は現時点で欧州も対象のため、抜本的解決には至らず)。こうした動きが増加する可能性は否めず、圧延メーカー幹部は「中国国内で消費できない余力分が東南アジアや他エリアに向かうことは十分考えられる」と気を引き締める。

 また日本市場においても少なからず影響が出る可能性がある。「すでに缶材の一部が日本市場にも入っている。品質やデリバリーで日本市場は高い障壁があるとはいえ、缶材に限らず、中国勢がアプローチする可能性もある」(圧延メーカー筋)とする。また一部メーカーを除き品質面で劣るといわれる中国勢が、日系ユーザーに本格的に量産出荷するような事態は想定しにくいものの、「〝それなり〟の品質のものを安値提示してきた場合、その価格だけが置き去りにされて市況を乱す要因になる」(別の圧延メーカー筋)と警戒している。

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