市丸、福田、遠藤、矢島、定まらないガンバ大阪の”核” 開幕3連敗の理由は中盤の底にあり

ボールをキープする市丸 photo/Getty Images

過去にセレッソ大阪を優勝争いに絡めるほどのチームに仕上げた実績を持つレヴィー・クルピ体制で今季をスタートさせたガンバ大阪は、18チーム中唯一となる開幕3連敗を喫してしまった。昨季から公式戦17試合連続で白星がないことも話題となり、開幕早々J2降格の可能性が騒がれる嫌な立ち上がりとなった。新体制をスタートさせた直後は結果が出ないケースも多いが、今のガンバはどこがおかしくなってしまっているのだろうか。

まずガンバは開幕戦で昇格組の名古屋グランパスと対戦し、2-3で惜しくも敗れた。この一戦で話題を集めたのは、高卒ルーキーのMF福田湧矢がいきなりボランチで先発起用されたことだ。クルピ監督といえばセレッソでも当時18歳だった香川真司をスタメンに抜擢したり、若手にチャンスを与えてきた実績がある。福田の先発起用も話題性は抜群で、後半から17歳のFW中村敬斗を出場させたことも大きな注目を集めた。

しかし、福田のパフォーマンスは攻守ともに課題が目立った。ボールを受けてもなかなか前を向けず、守備でも相手に簡単に剥がされる場面もあった。それを相棒がサポートできればよかったのだが、この試合で相棒を務めたのは20歳の市丸瑞希だ。こちらも経験豊富ではなく、ガンバは試合の舵取りを超フレッシュなコンビに任せていたのだ。このボランチのところに今のガンバは大きな問題を抱えてしまっている。

続く第2節の鹿島アントラーズ戦では福田ではなく、新加入の矢島慎也を市丸の相棒として先発させた。ところが、名古屋よりも守備が統率された鹿島を相手に2人は大苦戦。矢島も何度か不用意なパスミスをしてしまい、結局前半45分間だけで福田と交代している。市丸も冷静さを欠いており、自陣深くでボールを奪った直後にトリッキーなヒールパスで味方に繋ごうとするプレイを見せた場面もあった。自陣深くで選ぶようなプレイではなく、味方もそれに合わせられず再び鹿島にボールを奪われて二次攻撃のきっかけを作ってしまった。チームを中盤の底からコントロールする者として何をすべきなのか。その判断がまだまだ完璧ではない。

市丸は長短のパスを操ることができ、ボランチの位置から一気にワイドにボールを展開できるのは大きな魅力だ。しかし、それができるのはフリーの状態でボールを持った時に限定される。相手が少しでも寄せてくると判断が消極的になり、何気ないダイレクトパスをミスしてしまうこともある。このあたりはまだJ1のプレイスピードや相手の寄せの早さに適応できていない部分があるのだろう。チャンスを与え続ければ伸びるだろうが、相棒に頼れる選手を配さない限り難しい。

また、守備面にも大きな問題がある。市丸はあくまで司令塔タイプの選手で、中盤で激しく守備をこなすタイプの選手ではない。矢島も攻撃的な選手で、高卒ルーキーの福田もまだ不十分となれば中盤を誰が守るというのか。鹿島戦では左サイドでFW金崎夢生がボールを持った際に、市丸が上がってきた左サイドバックの対応に出ようとバイタルエリアを空けてしまうシーンがあり、土居聖真に中央からミドルシュートを打たれてしまっている。ここは遠藤保仁が必死に戻ってプレッシャーをかけたが、中央からフリーでミドルシュートを許してしまうのは大きな問題だ。

その穴が完全に露呈したのが第3節川崎フロンターレ戦で、この試合でコンビを組んだ市丸と遠藤は川崎のパスワークに振り回されるばかりだった。中盤で自由自在にポジションを変える川崎の攻撃陣の前にガンバのボランチ2人は誰を見るべきか曖昧になり、何度もバイタルエリアを使われている。もちろん遠藤も司令塔タイプで、守備に走り回ることに強みがある選手ではない。市丸と遠藤のコンビで川崎攻撃陣に挑むのはあまりに無謀と言える。

現在のガンバでは最終ラインもこなせるベテランの今野泰幸が負傷離脱しており、ハードワークできる井手口陽介も今冬に海外移籍を選択した。現在は中盤でフィルター役となる選手がいなくなっており、今野が戻ってくるまでは我慢の時間が続くことになるだろう。何よりクルピ監督は開幕節から3試合連続で異なるボランチコンビを先発させており、チームの核となるべきところが定まっていないことが3連敗の結果に直結していると言えよう。開幕節では福田に課題が見つかり、ならばと鹿島戦で先発させた矢島はミスを連発。なかなかゲームを組み立てられない状況を改善するため川崎戦では遠藤をボランチの位置に下げたが、これも効果的ではなかった。クルピ監督もここの起用法には頭を悩ませているのだろう。

ガンバは7日にブラジルのサントスに所属するU-20ブラジル代表MFマテウス・ジェズスの獲得を発表しており、ジェズスはボランチを務められる大型レフティーだ。課題となっているボランチに新戦力が加わるのは大きいが、ジェズスもまだ20歳と若い選手だ。全く異なる環境である日本、Jリーグのスタイルにすぐ適応できるかは不透明だ。開幕節の名古屋戦を除けば鹿島、川崎と強敵と当たってしまったことも開幕3連敗に繋がったとの見方もあるが、チームのバランスが乱れているのは間違いない。現状のまま継続的に白星を得ていくのは困難だろう。しかも次節は柏レイソルとの対戦となっており、こちらも決して楽な相手ではない。

1度家庭の事情によってチームを離れたが、セレッソ大阪はクルピ監督に約5年の時間を与えて上位争いができるチームを作った。当初はJ2にいたセレッソで結果が出ない時期もあったが、セレッソは昇格を逃してもクルピ体制を継続している。ガンバも成功を掴むために我慢が必要となるのだろうが、その我慢がJ2降格へと繋がっては大問題だ。早い段階で初勝利を挙げたいところだが、クルピ監督はチームにバランスをもたらせるだろうか。

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