琴海中バトン部、25年の歴史に幕 外部コーチ松本さん 夢かない教え子に感謝

 「なくなるのは寂しいけれど、夢をかなえてくれた生徒たちに感謝の気持ちでいっぱい」-。長崎市立琴海中で四半世紀にわたってバトントワリングを指導してきた外部コーチの松本洋子さん(64)は、特別な思いで14日の卒業式に出席する。立ち上げ当初から携わったバトン部が、部員減のため年度内で廃部するからだ。「『25年生』として、自分も一緒に卒業させてもらうような気持ち」と語る。

 小学生のころ、テレビで見た演技に心引かれた。市立丸尾中に当時あったバトン部に入部。瓊浦高1年だった1969年、1巡目長崎国体開会式の入場行進を先導した経験は、かけがえのない思い出だ。

 競技から離れ、普通の主婦として暮らしていた1992年、松本さんに転機が訪れた。長男が入学した琴海中の今里祐二校長=当時=が、必修クラブの指導者を地域住民に募集。「バトン部を作るのが夢」と提案すると「指導を通じて子どもたちに夢を語ってほしい」と激励してもらった。

 93年に必修クラブがスタート。95年、念願の部活動となった。地域の夏祭りや消防の出初め式、中総体の入場行進などに活躍の場を広げた。「生徒たちの晴れ舞台に花を添えたくて、コスチュームを夜なべして作ったことも。大会や合宿など、保護者や地域の方々にずいぶんと支えてもらってきた」と懐かしむ。

 最盛期の97年に約30人いた部員は、少子化などの影響で2003年には1桁に。それでも地道に活動を続けてきた。現在の部員は、3年の谷口夢香さん(14)ただ一人。進学する長崎女子商業高でもバトンを続ける予定で「今できない技にも挑戦し、成長した姿をコーチに見せたい」と意気込む。卒業後もときどき練習に参加している井手ひなのさん(16)=野田国際高等学院1年=は「大好きなバトンに出合わせてくれてありがとうという気持ち」と感謝の言葉を口にする。

 バトンの魅力について「技だけでなく、心も磨かれる」と松本さん。新年度は障害者向けのバトン教室を開く予定で、教え子たちとの日々をかみしめながら、新たな一歩を踏み出す。

笑顔でバトンを指導する松本さん(左)。隣は左から谷口さん、井手さん=長崎市琴海戸根町、市立琴海中

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