人口減に立ち向かう―【3】 「社会減」底打ち感も減少続く 設定目標ゼロは達成遠く 横須賀市

 横須賀市はここ数年、人口減少の克服を喫緊の課題としてきた。人口の増減には、出生と死亡の差し引きである「自然増減」と転入転出で生じる「社会増減」の2つの要因があり、市は後者に注力して種々の対策を講じてきた。その結果はどうか─。市がまとめたデータによれば、底打ち感はあるものの依然として社会減の傾向は続いている。

 市は2014年から17年までの4年間、前市長が掲げた「社会減ゼロ」を旗印に都市イメージ創造発信アクションプランを走らせてきた。「選ばれるまち」としての魅力を市外に発信するプロモーションに重点を置き、電車の中吊り広告、FMラジオ、住宅展示場でのキャンペーンを展開してきた。

 同プランに着手する前は社会減が加速している状況で、10年から13年まで年平均▲1053人。これが14年からの4年間は▲908人となった。現状について担当課では、「あの手この手でなんとか踏みとどまっている印象。対策を打ってこなかったらどうなっていたか」と話している。

定住促進は総合政策

 市がターゲットに置く20代〜30代のファミリー世帯を惹きつけるには、魅力のパッケージ化が不可欠だ。子育て・教育環境、交通利便、良好な自然環境などが定住の選択肢となり、「総合政策」で魅力を打ち出さなければならない。

 人口減少を食い止める方策として市は08年から12年まで、「ファーストマイホーム・スイートホーム応援制度」の名称で定住政策を打ち出した。約14億円6千万円の総事業に対して、5千人の利用者があったものの市内移動が多数を占め、議会から費用対効果が問われた。住宅購入資金の数パーセントにも満たない金額によるインセンティブでは、定住・移住のハードルを越えることは難しいという結論だ。横須賀の都市イメージが希薄で、「住むまち」の選択肢に入っていないこともアンケートなどでわかった。その一方で市民の8割が「住みよい」と感じている実態も把握。これらを受けて、市民が感じている住むまちの魅力を市内外に大々的に発信するプロモーション事業がスタートした。市民の共通認識の醸成を目的に発行されたのが横須賀の魅力を網羅した130ページの全集。約8万部を市内の小・中学校などを通じて配布された。

 このほか、モニターツアーの実施や子育て支援サイトの運営、物件紹介や2世帯リフォーム助成など、定住に向けて多角的なアプローチを行ってきた。

「住みたい」にシフト

 上地克明市長が新年度予算と合わせて発表した「横須賀再興プラン」では、中学校給食の早期実現、小児医療費助成の拡大など、子育て世代のニーズに応える目玉メニューを定住アピールの軸としている。市民の満足度を高めることで「住むまち」の実現をめざす考えだ。プロモーションは、費用対効果を厳選していく方針。スポーツ(マリノス・ベイスターズ・ウインドサーフィンW杯)、音楽イベントなどの話題を提供していくことで注目度を高めていくという。

 定住について上地市長は「助成や優遇制度といった目先の利益で住む場所を選んで、本当に幸せな生活を送れるのか。市民マインドを高める政策にシフトしたい」と答えている。

次回は、市内の人口増減の状況を地域別に比較・検証。今に至った背景を探る

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