関わりのねえことで

 あっしには関わりのねえことでござんす…の決めゼリフを聞いて、長い楊枝(ようじ)をくわえたあのクールな時代劇ヒーローをイメージできるのはどの世代からだろう。中村敦夫さん主演の「木枯し紋次郎」は1970年代のヒット作▲よく似た発言が昨日の参院予算委で-。決裁書類の書き換えを政府が認めた渦中の「森友文書」に関連して「書き換え前の文書を見ても、私や妻が関わっていないのは明らかだ」と安倍晋三首相。この期に及んでどの口が…と書いたら言い過ぎだろうか▲「昭恵夫人の名前」や「夫人の発言にまつわる記述」が元の文書から削られたことは明らかになっている。公の文書に名前があったことも、それが官僚の手で意味ありげに消されたことも、普通の言語感覚からすれば「関わり」以外の何ものでもない▲念のため辞書を引いてみると、単に「関係する」から「左右する」「強く影響する」まで「かかわる」の語義は意外に幅広い▲ああも強く言い切るのだから、いずれの意味でも「関わりはない」と言うのだろう。しかし、それを素直に聞けない程度に、政府への信頼は揺らいでいる▲紋次郎は「俺には関係ないよ」と言いながら、毎週毎週、行く先々で厄介ごとに巻き込まれては、大立ち回りの末に風の中に去っていく。さて首相は…。(智)

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