【きらりと光るわが社の〝得意技〟】〈泉州電業〉農業用ヒーター「アビル(ABIL)ヒーター」 幅広い温度域で効率よく発熱

 泉州電業(本社・大阪府吹田市、社長・西村元秀氏)は、1949年設立の業界最大手の独立系電線総合商社。東証1部上場企業。今期連結売上高は780億円を見込む。事業所は国内16拠点。子会社は国内6社、海外が5社(中国・台湾・タイ・フィリピン)。泉州電業の強みは国内外の拠点をフルに連携させ、「ジャストインタイム」「オリジナル商品」「ケーブルアッセンブリ」の3ビジネスモデルを持つことだ。

 同社の一押し商品は、2016年9月から本格的に事業を立ち上げた、農業用ヒーター「アビル(ABIL)ヒーター」(新発熱体)だ。泉州電業としてアグリ(農業)事業参入は初めてで、名古屋支店が中心となり進めている。

 アビルヒーターは、土を暖める画期的な商品。ステンレス薄膜に特殊な含浸処理をした新発熱体が土を暖める。幅広い温度域で安定的に効率よく発熱する。温度調整も可能だ。電線はベトナムで製造し、フィリピンの海外子会社で加工する。

 17年1月に愛知県長久手市に「アビルヒーター試験農園」(約500平方メートル)を開設し、野菜や果物で地熱温度試験を行っている。

 「自社開発のアビルヒーターは、特許申請中。名古屋支店を中心に事業に取り組んでいる。事業化からまだ間もないが、農業フェアなどに出展しPRしている。農業ハウスの省エネに最適な商品として売り込む」(同社)。

 試験農園ではトマト、きゅうり、ナス、ピーマン、ホウレンソウなどで対照実験を実施。「アビルヒーターで土中温度を適温にしたスイカとメロンの場合、露地モノより1カ月早く結実した。糖度が高く味も良かった。小松菜では通常収穫まで約2カ月かかるところを、32~33日と大幅に短縮できた。収穫まで1~2週間短縮できれば市場での高値買い取りが期待でき、利点となる」(同社)。今後はイチゴなど多くの品種で実験し、ノウハウとデータを収集するという。

 アビルヒーターの1本当たりの消費電力は48V時で約53W。「60坪のハウスで作物200株」という条件では、ヒーターは33本使用しても合計1749Wで済む。一般燃焼式ビニールハウスとの併用で年間ランニングコストは約60%の削減効果が見込まれる。

 「農業用は40アンペア品だが、簡易型商品である5アンペアの家庭菜園用も開発済み。レンタル・ローン対応なども含め、事業化に拍車を掛けていく。3年後の販売目標は最低6千万円を見込んでいる」(同)。(白木 毅俊)

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