金属行人(3月15日付)

 世界を代表する日本の大動脈が1988年の開通から今年で30周年を迎える。本州と北海道を結ぶ「青函トンネル」と、多島美の瀬戸内海に架かる道路と鉄道の併用橋「瀬戸大橋」だ。共に今月13日と来月10日が節目に当たる▼両端の北海道と青森県、岡山県と香川県などの各都市では記念イベントが実施、計画される。前後の期間を含めて一帯にはお祝いムードが立ち込める一方、建造の社会的意義やその重要性を再認識する機会を担う▼いずれも当時として最高水準の技術を駆使し、完成に至っている。以来、今日にかけて足かけ30年にわたって、滞りなくヒトやモノの輸送を支えてきたことで一定の経年劣化が生じており、その維持管理にも相応の策が求められる▼最新の素材や工法で課題解決に取り組むとともに、それを主導する人材の育成や技能の伝承も看過できない。ここしばらく国内で同様の大規模なインフラ整備事業はご無沙汰ながら、今後の展開次第で海外での新たな商機の創出にもつながってくる▼新設から保全までのノウハウが詰まった巨大構造物の存在価値は計り知れない。50年、100年と時間を重ねるごとに我々もまたその圧倒的な存在感に気付かされることだろう。

© 株式会社鉄鋼新聞社