新天地求めて渡米、“松坂世代”梵の今 「数%」にかける思い

米国でトレーニングを積む梵(右はカスティーヨ氏)【写真提供:養父鐵氏】

昨季限りで広島を退団、新天地求める“松坂世代”梵の今

 開幕を間近に控えたプロ野球は、今シーズンから中日に入団した松坂大輔投手の復活に注目が集まっている。そして昨季で巨人を自由契約となった村田修一内野手は、ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスへ入団。NPB入りを目指し新天地で始動した。一方、両選手と同世代の元広島・梵英心内野手はアメリカで新天地を模索している。

 梵は社会人の日産自動車(2010年休部)から2005年の大学生・社会人ドラフト3位で広島に入団。ルーキーイヤーに打率.289、130安打を放ち新人王を獲得した。2010年には43盗塁で盗塁王を獲得。しかし、近年は若手の台頭もあり出場機会を減らし、2016年はシーズン無安打に終わった。そして昨シーズンは1軍での出場機会がなく、オフに自由契約に。それでも現役続行への思いは強く、退団後は広島市内のジムやグラウンド、時には公園でトレーニングを続けながらオファーを待った。

 しかし、吉報が届くことはなかった。梵は日産自動車の先輩にあたる養父鐵氏に相談。かつてダイエーにも所属し、昨年は四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスで監督を務めた養父氏はアメリカのマイナーリーグや独立リーグ、ベネズエラ、台湾など、世界各国でプレーしたこともあり、「いい経験になるから」と、梵に海外でのプレーを勧めた。

 養父氏はダイエー時代のチームメートで、現在はアメリカ・マイアミでスポーツジムを経営しているカルロス・カスティーヨ氏を紹介。梵は同氏の元でトレーニングを続けながらトライアウトを受けるため、2月上旬にアメリカに渡った。

「数%」にかける思い、「チャレンジしたい」

 現地でトレーニングを始めたころ、日本の独立リーグからオファーがあった。しかし、「アメリカでチームを探す」と固く決心をして渡米したため、断りを入れた。今は体の仕上がりもよく、アメリカのマイナーリーグのトライアウトを受けており、メキシコ、ドミニカ、イタリアなどの球団も視野に入れ、挑戦を続けている。

 梵は広島を退団した時の心境を「いつか、そういう時が来るとは思っていた」と振り返る。しかし、実際にその時が来ると「まだ野球を続けたい」という自分の強い気持ちに気が付いたと語る。

「引き際については、もちろん頭の中にあります。それでも、今できることに夢中になりたいと思いました」

「まだ野球をやれる環境が数パーセントでもあるなら、チャレンジしてみたい」――。その思いが、異国でのプレーを目指す原動力となった。

同世代の松坂&村田、古巣広島の選手たちから得るエネルギー

 自身と同じく、昨年所属球団を自由契約になり、新天地で再スタートを切った松坂、村田の存在も刺激になっている。

「やはり、同世代の選手の活躍は励みです。自分も彼らの決断を素晴らしいと思いますし、一ファンとして、勝手に力をもらっています。たくさんの方にエネルギーを与えて欲しいと思っています」

 遠く離れたアメリカで、古巣・広島のニュースもチェックしているという梵。かつてのチームメートの健闘も、自身の活力になっている。

「広島では、先輩、後輩、同世代、本当にいい仲間に巡り合わせてもらいました。みんな怪我などせずに、1年間頑張ってもらいたいと思っています」

 37歳のベテランは悔いのない野球人生を送るため、同世代、そしてともに戦った仲間の活躍を力に変え、新たなプレーの場を求めて挑戦を続けている。

(Full-Count編集部)

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