スター・トレイン

 掲示板の前。息を詰め、目を凝らして自分の番号を探す子。祝福と慰め、両方の言葉を用意しながら遠巻きに見守る母。そんな緊張感と直後の歓喜を詠んだか、俵万智さんにこんな一首。〈全身を光らせて子が駆けてくる/これは合格したなと思う〉▲努力が報われた安堵(あんど)や達成感や誇らしさ。さまざまな感情が輝きになってあふれる。先週は県内の公立高校入試の合格発表があった▲多くの15歳にとっては初めて臨む本格的な試練だ。同じ学校で頑張ろうね、と励まし合ってきたのに残念ながら明暗が分かれてしまった…そんな友達同士もきっといるだろう▲合格した皆さん、おめでとう。喜びに水を差すつもりはないけれど、おせっかいなおじさんはつい思う。この合格自体が、あなたの将来に確かな何かを約束してくれるわけじゃない▲あと一歩届かなかったみんな。一度や二度のペーパーテストで測れることなんて、いくつもある大切なことのほんの一部でしかない-と言って慰めになるかどうか。でも、少しだけ泣いたら前を向こう▲女性3人組の人気音楽ユニット「Perfume」の「STAR TRAIN」にすてきな歌詞がある。〈いつだって今が/常にスタートライン〉。春休み。ひと息ついたら星の列車で次の駅へ。旅は、始まったばかりだ。(智)

© 株式会社長崎新聞社