「松坂大輔でなければ今の投球で1軍はない」 山崎武司氏が指摘する課題

復活が期待される中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

OP戦2試合で防御率7.20も徐々に感覚取り戻す松坂、開幕1軍への課題は…

 中日の松坂大輔投手が開幕ローテーション入りへ向けてアピールを続けている。「平成の怪物」は2015年に日本球界に復帰し、大きな話題を呼んだものの、右肩の故障などに苦しみ、ソフトバンクでは3年間で1軍登板1試合のみ。しかし、今季加入した中日では順調にキャンプを消化し、オープン2試合で防御率7.20ながら、徐々に実戦感覚を取り戻している。

 ただ、本当に重要なのは、やはりペナントレースが開幕してから。松坂は本当に活躍できるのか。そして、中日の戦力になるのか。ファンの興味はこの2点に集中しているのではないだろうか。キャンプを視察し、オープン戦の松坂の投球も注視している中日OBの野球解説者・山崎武司氏は「松坂大輔じゃなければ、今の投球では1軍のチャンスはない」と率直な見方を示した上で、「すべてはストレートの出来」とキーポイントを挙げた。

 まず、キャンプから実際に見てきた松坂の投球について、山崎氏は「3年間何もやってなくて、よく頑張ってるなって。それだけ。その印象だけ」と言う。開幕ローテ入りの可能性についても「いいとか、悪いとか、みんなが色々言ってるけど、松坂大輔じゃない違う人物が今のピッチングをそのまましていたら、1軍のチャンスはないわな」と指摘。投球そのものを見れば、まだまだ物足りないとの評価だ。

 松坂は今年9月に38歳になる。圧倒的な投球を見せていた全盛期の姿に戻ることは「みんな求めていないし。要求していない。それは当然」だという。山崎氏が望んでいるのは、競争の中で松坂が先発ローテーションの座を射止めること。伸び盛りの若手にチャンスを与えるのか、ベテラン右腕の豊富な経験に期待するのか。どの球団も、この選択を迫られる。

「しっかりとした段階を踏んで(開幕後に)1軍で投げてほしいな、と。やっぱり彼(松坂)のためのドラゴンズじゃないから。チームを強くするために松坂を起用する、というのが一番の目的だから。結果を残さずに投げるチャンスを与えるのは、フェアじゃない。若くて伸び盛りの選手もいる。その辺が、外から見ていてどうなのかなと(思う)。オープン戦で結果を残さないといけない」

 山崎氏はこう“提言”する。

中日OBの野球解説者・山崎武司氏【写真:岩本健吾】

「変化球は投げられる」が…課題は直球「どうやって解消するのかな」

 では、今の松坂の課題は何か。山崎氏は、オープン戦初登板で2回2安打2失点とまずまずの内容だった4日の楽天戦を振り返り、「全球見たけど、『うーん』っていうボールがあった。スライダーは良かったけど、真っ直ぐを引っ掛けるわ、抜けるわ、で。3、4球に1回はそういうボールがあった。あれが、もっと切羽詰った時にどうなるのかな」と指摘する。

「変化球は投げられる。スライダーは低めに集まってるからね。変化球の精度が良くなっていると自分でも言ってるけど、こっちが見てもそうだから」と評価しているが、課題はやはり真っ直ぐ。「すべてはストレートの出来。すべて変化球を投げるわけにはいかない。真っ直ぐが、まだ抜けたり引っ掛けたりしてるから、どうやって解消するのかな、というところだろうね」。投球の軸であるはずの直球の精度を上げる必要があるというのだ。

 なぜ、直球が抜けたり、引っかかったりするのか。山崎氏は「それはやっぱり怖いとか、きわどいところに投げないといけないとか、ハートの部分もあると思う。肩の回り具合でちょっと引っかかってるところもあると思う。それはいろいろなことがあると思う」と推測。ただ、これが改善されなければ、“復活”へのハードルは高いと見ている。この登板を見た後、山崎氏は全盛期の松坂の投球映像と見比べて、違いを探ったが、同じような“現象”は見られなかったという。

「当然(全盛期と)スピードは違う。でも、やっぱり松坂大輔の全盛期はボールが抜けない。だから、球速が140キロとか135キロになっても、抜けないボールを投げられないと勝負にならないかなと思う。若くても、直球が抜けている選手は駄目。あの山本昌さんだって晩年は抜けていた。あれだけ精密機械みたいなコントロールを持っていた人が、晩年のちょっとやばいなと思っていた時にすっぽ抜けが多かった。そういうのがなくなってくると、ちょっと形になるのかな。勝負どころで本当にアウトローにくるのかなと。松坂もまだ真っ直ぐの4、5球で1回は抜けるし、引っ掛ける。この(課題の)解消は必要かなと思う」

 松坂が“復活”を遂げ、開幕後も勝利を重ねれば、プロ野球界が盛り上がることは確実。当然、中日にとっても強い追い風になるはずだ。課題をクリアし、1軍のマウンドで躍動できるか。その投球には常に熱視線が注がれている。

(Full-Count編集部)

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