ルノーPUに変更したマクラーレンはレッドブルを上回れるか/今季注目の5大対決(1)

 いよいよ開幕が迫った2018年のF1シーズンは、各所でさまざまな対決が勃発することが予想される。そのなかでも特に注目すべき対決を全5回に分けて紹介する。第1回は今季ルノーPUに変更したマクラーレンと、そのマクラーレンが上回ることを目標としているレッドブルだ。 

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 2014年にハイブリッドV6パワーユニットが導入されて以来、レース結果にエンジンが占める役割は非常に大きいということになっている。しかし本当にそうだろうか。確かにメルセデスの圧倒的優位に、パワーユニットが大きく貢献していることは間違いない。

 しかしまったく同じPUを使っているはず(と、あくまで仮定してのことだが)のフォース・インディアとウイリアムズは、表彰台にも滅多に上がれていない。逆にメルセデスよりパワーも信頼性も劣っているはずのルノーとフェラーリ製PUを搭載したレッドブルとフェラーリは何度も勝ち、中でもフェラーリはメルセデスの牙城を脅かす存在になっている。

 そんな状況の中、今季のルノーユーザーは3つ。ワークスルノーとレッドブル、そしてマクラーレンである。これもあくまで全く同じ仕様のPUであると仮定してだが(技術規約上も、そうであるよう厳しく定めている)、今季の三者の力関係はパワーユニット以外の要因で決まるということだ。

 マクラーレンはこの3年間低迷してきたのは、ひとえにホンダのせいであり、車体性能に限れば、われわれはトップチームにも負けないと言い続けてきた。その言葉が単なる言い訳でなかったかどうかも、今季証明されることになる。

 しかし冬のバルセロナテストで壊れ続けたマクラーレンには、さっそく黄信号が灯ったように見える。どうやらMCL33はパワーユニットの冷却をほとんど考えず、ひたすら空力効率だけを追求したようなのだ。

 一方でマクラーレンのスタッフたちが、かつての栄光を取り戻そうと必死であること、そして何よりも直接のライバルたるレッドブルを打倒しようという熱意には、相当のものが感じられる。ここ数年、レッドブルにTAGホイヤーやモービルといった貴重なスポンサーを奪われ続けたこともある程度は関係しているだろう。

 エンジニアにしても、たとえば天才エイドリアン・ニューウェイはマクラーレンを去って、レッドブルを頂点に押し上げた。逆に彼の右腕だったピーター・プロドロモウは、マクラーレンに移籍している。マクラーレンはプロドロモウの後任ダン・ファローズまで引き抜こうとしたが、彼はレッドブル残留を選択した。

 とはいえ『打倒レッドブル』と、熱くなっているのはマクラーレンだけという気もする。両マシンの性能差は、それぐらい大きいと思われるからだ。

 一方でレッドブルとルノーの関係の悪さは、マクラーレンとの比ではない。そしておそらく今年いっぱいで、両者の契約は終わることだろう。なのでマクラーレンとしてはその隙に、ルノーとの間に単なるカスタマーではない特別な関係を結ぼうと目論んでいるようだ。

 しかし問題は、供給主たるルノーがマクラーレンの直接のライバルになる可能性が高いことだ。ルノーは毎年着実に戦闘力を上げ、今季は中団トップの地位を狙っている。マクラーレンも目標は同じで、あくまで信頼性の問題さえ克服できればだが、予選、レースともにかなりの速さを見せるはず。

 今季は両者のガチンコ勝負が、何度も繰り広げられることになるだろう。そんな状況でも、マクラーレンに喜んで最新仕様のPUを供給し続け、さらに緊密な関係を結ぶほどルノーが太っ腹かどうかも含め、この両者の闘いも注目である。

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