FFG・十八銀統合計画 公取委、再調査結果GW前後提示へ 審査打ち切り観測も

 親和銀行(佐世保市)を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)と十八銀行(長崎市)の経営統合を巡り、公正取引委員会は県内企業に統合の影響を尋ねる再アンケートの結果を、5月の大型連休(GW)前後に銀行側へ示す見通しだ。2016年6月の統合審査開始から間もなく2年となるが、統合実現の行方は不透明。銀行側は粘り強く打開策を探る構えだが、審査の長さも再調査も異例なだけに、公取委はその後も進展のめどが立たなければ審査の打ち切りも想定しているのではないかとの観測が出始めた。
 
 ■ 選択肢

 FFGと十八銀が統合すれば県内で圧倒的な勢力となる。公取委は他金融機関の動向を含め多角的に分析した結果、県内シェアが約7割に高まる企業向け融資の分野で「競争が制限される」とし銀行側に有効な問題解消措置を求めている。
 審査の焦点は▽取引先は統合後に金利などの融資条件が悪化した場合、借り換えができるか▽受け皿となる他金融機関は営業態勢が十分か-。特に中小・零細企業にとって十分な選択肢が確保されるかが鍵だ。
 問題解消措置を巡っては、他金融機関に貸出債権を譲渡し競争力を引き上げる方策が検討されているが、公取委と銀行側の想定規模には開きがある。銀行側は代替案として金利の監視体制整備などを提案したが、公取委は不十分とした。交渉は難航し、統合は17年7月に無期限延期となった。
 公取委の厳格な姿勢を下支えしているのが16年5月に実施した県内企業への最初のアンケートで、統合後に融資条件が悪化すれば、借り換えを検討するとの回答は全体の約3割にとどまった。昨年12月に統合を承認した新潟県の第四銀行と北越銀行の審査で同様の調査をした際は本県と比べ競合先も多く、借り換えを検討するとの回答は中小企業でも約5割に上っていた。
 ただ調査は、長崎が約3千社対象で回答率約3割だったのに対し、新潟は約6900社対象で回答率約5割。FFG・十八銀は「長崎は少ない」として公平性・客観性のため再調査を求め、公取委が応じた。再調査は2月に始まり、対象も約4400社に増やした。回答率は現在約4割。3月末まで回収を続け内容を分析。5月の大型連休前後に銀行側に示すとみられる。
 
 ■ 疑問視

 公取委の山田昭典事務総長は再調査について「(前回調査から)時間がたち、より正確な情報を把握する」「(前回から)大きな変化はない可能性もある」と説明している。ただ公取委OBはこう推測する。「いつまでも審査を続けるのは好ましくない。再調査は審査の打ち切り、統合の承認を含め最終判断へのステップではないか」。調査結果が前回と大きく変われば審査に影響しそうだが、大差なく、その後も審査に進展の兆しがなければ、企業統合審査では初の「排除措置命令」を出し、打ち切る可能性があるというわけだ。
 一方で、人口減少と市場縮小、低金利が進み、地銀を取り巻く環境が厳しさを増す中、公取委の審査の在り方を疑問視する声も金融業界や企業の中にある。
 最新の「中央公論」4月号で、金融庁の森信親長官と増田寛也元総務相が地銀を巡り対談。「公取委も金融庁も権限の使い方を誤れば経済に悪影響を与えるリスクがある」(森氏)、「“秩序ある独占体制”を認める行政展開も必要だ」(増田氏)と指摘した。
 再調査に回答した企業からも、十八銀と親和銀で競争を続けてほしいとの声がある一方「統合しないと銀行側が将来的にもたない」「かえって競争力が生まれる」と理解を示す声も一定ある。
 再調査を経て公取委、銀行側がどう動くか。今後の全国の再編機運に影響しそうなだけに注目される。

長崎市中心部に並んで立つ十八銀行思案橋支店(右)と親和銀行浜町支店。統合実現の行方は依然不透明だ

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