松井に挑んだ男たち

 2012年夏の甲子園初戦で、松井裕樹さん(桐光学園)に22三振を喫した今治西(愛媛)。5番打者だった中内洸太さんは、試合後のインタビューで松井さんのことばかりを聞かれたことを思い出す。自分たちのことは聞かれず、「違和感がありました。それで松井君は次元が違うんだと」。

 準々決勝で対戦した光星学院(現八戸学院光星、青森)の4番・北條史也さんは、当時のスコアを聞く前に即答した。「全部覚えてますよ。三振、三振、レフト前、左中間です」。その球は「投げた瞬間は真っすぐに見えて、振り始めたら視界から消える。見たことない軌道でした」。

 八回の左中間は桐光を突き放した2点適時打。だが北條さんは「打ったのは球が切れていた1、2打席目じゃないから、自信になってない」。今、阪神でレギュラー争いを続けながら1軍での松井さんとの“再戦”を願う。「真っすぐを打ち返したいです」     ◇ 高校野球の夏の甲子園が今年、100回大会を迎える。全国屈指の激戦区神奈川の魅力をさぐる100回連載。今回は、2012年夏に22奪三振の大会記録をマークした松井裕樹さん(桐光学園)に挑んだ選手達が、「松井」を振り返ります。

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