【古河電工、UACJ新体制に反対】〈小林敬一社長の会見要旨〉現社長・会長の退任要求 「執行責任明確化を」「筆頭株主として行動」

 古河電工は2月27日、24・9%を保有する筆頭株主としてUACJの新役員体制に反対を表明した。石原美幸常務の社長昇格には賛成したが、留任予定の山内重徳会長、副会長就任予定の岡田満社長の退任をガバナンスの観点などから要求。古河電工の小林敬一社長が16日会見し反対理由や今後の対応を説明した。会見要旨は次の通り。

――反対理由から。

 「古河スカイと住友軽金属の合併でUACJが発足し5年を迎えるが統合効果が十分出ず、海外大型投資の収益化が遅れリスクになっている。その中で石原新社長に交代し、業績改善へ人心を一新することは全く異存がない。ただ社長交代後も山内会長・岡田社長が代表権を持ちながら経営陣に残ることは経営責任の軽視であるし、新社長が存分に腕を振るう支障になるというガバナンスの問題から反対だ」

――表明までの経緯は。

 「先月13日に先方の会長・社長らが3Q決算の報告に来られ、突然人事案を切り出された。現経営トップの2人が引き続き代表権を持ち、当社派遣の監査役の名前がなかったことに大変驚いた。その場で承服できかねると伝え、意見を後程出すと話した。人事案を諮るUACJの役員会前日まで音沙汰がなく、再考を願う文書を当方からお渡した。しかし人事案はそのまま役員会を通った。これを看過すれば現行案が既成事実化し、筆頭株主として当社が容認していることになる。そういう誤解をなくすため敢えて反対を表明した。トップ同士でも会っており現在は話し合いをしているところ」

――ガバナンスの問題が特に大きい。

 「どちらかというとガバナンス。当社では会長は監督者として代表権を持たず、経営執行側が持っている。この体制で執行陣が自分たちの責任と権限で経営のかじを主体的に取っている。会長が代表権を持つケースを全否定はしないが、今回のUACJでは問題がある。代表権には執行に対する責任も含まれる。現在の経営状況で山内・岡田の両氏に引き続き代表権を付与すれば新社長は思い切った経営判断ができなくなる。また両氏が取締役から降り会長・副会長でとどまることも当社としては決して容認できない。代表権は新社長以下執行メンバーが持ち、自分たちの判断で困難を乗り越えていくことが大切だ。また取締役と監査役に当社の推薦・容認するメンバーを1人ずつ入れてもらうことも求めている。独立性の観点から適切な人選を進めたい」

――経営状況はこれまでにも株主総会で指摘できたのでは。

 「合併後の組織融和についてはしっかり取り組んでいただけた。またアセットが重たい分野で世界メジャーを目指す中で、さまざまな挑戦が必要なのも、ある程度は理解できる。当社としてリスペクトを持ち、さまざまな意見を聞きながら会話してきたので、それ以上のことを総会で指摘するという発想はなかった。ただ株価から見る投資家の信頼低下や、大型投資のリターン時期を明確に説明する重要性などを派遣していた監査役を通じて伝えてはいた」

――反対の背景には合併旧社の役員数のバランスもあるのか。

 「組織融和は大きく進んでおり今の役員層は優秀な人材が集まった結果に過ぎない。繰り返すが新社長に腕を振るってもらえる環境が重要。社長以下のメンバーも新社長が腕を振るいやすい体制にしてほしい」

――現行案が株主総会で提案された場合は。

 「反対の議決権を行使するほか、プロキシーファイト(委任状争奪戦)になっても仕方がないと考えている。ただ、今は多くの方に声を掛ける時期ではない。まず当社とUACJの間で結論を出すことが重要。再考していただくのが願いだし、リスペクトし合える関係を取り戻したいと思う。それが難しければ総会での決着しかない」

――望ましいUACJとの距離感は。

 「大株主と企業の一般的な距離感が望ましい。我々はアルミのリーディングカンパニーとしてUACJに敬意を持っており、何でも横から口出ししたいとは思っていない。これまでも先方に経営をゆだねており、出資比率の拡大なども現在の所考えていない。ただUACJの業績や財政状態は当社に与えるインパクトが大きい。これ以上現状を看過すると、株主として最低限の注意義務に反すると考え今回は行動した。今までも株主として必要な意見を述べてきたし、これからもそうしていくつもりだ。今後もリスペクトし合える関係でありたい」

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