臨海部の津波被害軽減を 共同研究を紹介市や東北大富士通など

 川崎市と東北大学災害科学国際研究所、東京大学地震研究所、富士通の4者が川崎臨海部(川崎区)の津波被害を軽減する共同研究を進めている。15日には市内で講演会が開かれ、専門家らがスーパーコンピューターや人工知能(AI)などを駆使する研究の意義などを強調した。

 同臨海部では、慶長型地震の場合、発生から約96分後に最大となる約3・7メートルの津波の到達が予想されている。共同研究は、工業用埋め立て地を囲む運河特有の複雑な津波の動きや、人口密集地の避難行動を解析し、最新技術を使って混乱が少ない避難や対策を目指している。

 前気象庁長官で富士通研究所顧問の西出則武氏は、発生した地震で推測して出す津波警報の不確実性に触れた上で、「東京湾内の川崎臨海部は津波が入ってくるまでに60〜90分。予測の補正などやれることはたくさんある。ICT(情報通信技術)、AIを目いっぱい活用すれば、最適な避難対策、避難計画がつくれる」と共同研究の意義を強調した。

 東北大学災害科学国際研究所の今村文彦所長は、川崎臨海部の昼間人口34万人の避難シミュレーションの一部を紹介し、「避難行動で混雑、混乱が予想される」と指摘。「臨海部の運河を複雑に動く津波を予測し、浸水するエリアを早い段階で正確に予測できれば、すぐに避難が必要な人と少し待ってもらっていい人を分ける対応もある」と説明した。

 東京大学地震研究所の古村孝志教授は「川崎の共同研究が成功すれば、湾内で同じ問題を抱えている国内外に生かすことができる。そのため『川崎モデル』を目指したい」とし、地域特性に合わせた津波対策に意欲を示した。

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