王者ホークス、オープン戦で異変…その強さは盤石か? 見えてきた問題点

ソフトバンク・工藤監督【写真:藤浦一都】

強さ健在も…オープン戦8連敗に見るホークスの課題

 ようやく長かった連敗を脱した。2年連続の日本一を狙うソフトバンク。20日、本拠地ヤフオクドームで戦った中日とのオープン戦、1点ビハインドの9回に中村晃のソロで追いつくと、さらに川島慶三がサヨナラ3ランを放った。最終回に一挙4得点を挙げて試合をひっくり返し、16日ぶりとなる白星をマークした。

“春の珍事”だった。3月4日の阪神戦で勝利してから、ソフトバンクは白星から見放された。1つの引き分けを挟んで、何と8連敗を喫した。オープン戦といえど、11試合を消化した時点で2勝8敗1分の11位。2013年から3位、1位、1位、3位、2位と過去5年間オープン戦でも強さを見せてきたソフトバンクにとっては、ちょっとした異変だった。

 今年のホークスは、どこかおかしいのか? そんな心配の声すらも聞こえてきそうな連敗だった。ただその実を見てみると、それほど心配するほどでもないことが分かってくる。

 昨季のソフトバンクといえば、鉄壁のリリーフ陣が最大の強みだった。6回終了時点でリードを奪っていれば、76勝3敗。モイネロ、岩嵜翔、サファテの3人を中心とした救援陣がチームを支えてきたのは、紛れもない事実だった。

終盤に逆転を許す展開目立つ

 開幕に向けて調整の場となるオープン戦はあらかじめ、その試合に投げる投手、そして投げるイニング数が事前に決められている(稀に乱調などで予定が狂うことはあるが……)。リードしているからといって、彼ら勝利の方程式を投入することは、シーズンが目の前に近づいた残り数試合だけしかない。

 3月11日のロッテ戦。両チーム無得点で迎えた6回に投げた加治屋蓮が2点を失って敗戦。ここまでは打線が元気がなかったところもあるが、13日の巨人戦。5回まで4点差、7回に入ったところでも2点のリードを奪っていた。ただ、回跨ぎで8回を投げた育成の野澤佑斗が一挙に5点を失い、逆転負けを食らった。

 15日の巨人戦は6回を終えて1点をリードしていたが、7回に登板したドラフト2位ルーキーの高橋礼が2点を失い、逆転された。17日のロッテ戦は1点ビハインドの8回に逆転したが、9回に嘉弥真新也が先頭打者からの3連打で2点を奪われ、サヨナラ負け。シーズンにおける嘉弥真の役割は“左キラー”なのだが、この時は対戦した3人ともに右打者だった。

 そして8連敗目となった18日のヤクルト戦。6回終了時点で1点をリード、7回表には2点を追加して3点差に広げた。シーズンなら勝利の方程式で逃げ切るところだが、7回裏にマウンドに上がった飯田優也が先頭打者から3連打(自らの拙い守備もあった)で無死満塁とされると、ここでバトンを受けた加治屋蓮が2本の適時打を打たれた。この回4点を失って、逆転負けを喫した。

大きな問題点も?

 白星のなかった9試合のうち、終盤にリードを奪いながら、リリーフで逆転負けを食らったのが4試合、同点の状況からリリーフが勝ち越されたのは2試合あった。シーズンであれば、別の展開、継投となっていたであろうことは、想像に難くない。結果、敗れてはいるものの、戦い方としては昨シーズンと同じような戦いをしていたのだ。

 ただこれを見ると、ソフトバンクにとって大きな問題点も見えてくる。サファテ、岩嵜、モイネロ、森唯斗、嘉弥真新也と勝ちパターン以外に、中堅どころの投手に勝利の方程式の面々に食い込むだけの存在がいないのだ。勝ちパターンの面々に何かアクシデントがあった場合には代えがきかなくなるリスクが垣間見える。

 加治屋蓮は5年目、飯田優也は6年目となり、もはや若手とはいえない。笠谷俊介や田中正義、古谷優人といった若い選手がイキの良さを見せており、このままではその座を取って代わられる可能性も十分にあり得るだろう。

 ようやく連敗を脱した王者ソフトバンク。先行し、鉄壁のリリーフ陣で逃げ切る戦い方をすれば、やはり王者は強そうだ。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

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