【MLB】”若きスター”トラウトが大谷へ授けるメッセージ「ステイ・ポジティブ」

Full-Countのインタビューに応じたエンゼルスのマイク・トラウト【写真:盆子原浩二】

19歳でメジャーデビュー、各賞総ナメで早くも“ベテラン”の26歳

 今年でメジャー8年目を迎えるスーパースターがいる。エンゼルスの正中堅手マイク・トラウトだ。まだ26歳という若さながら、新人王、MVPを2度、球宴選出6度(うちMVP2度)、シルバースラッガー賞5度と各賞を総ナメ。過去7年の通算打率は.306、出塁率は.410と驚異の数字で、通算1040安打、201本塁打と異例のスピードで節目をクリアした。

 2009年ドラフト1巡目(全体25位)でエンゼルス入り。当時から超有望な高卒ルーキーとして注目を集め、2011年に19歳の若さでメジャーデビューした。その年は40試合出場で打率.220、5本塁打に終わったが、その秘めたる強靱なパワーは熟練のマイク・ソーシア監督に「19歳でライトへあれだけのホームランを打てるのはめったにいないよ」と言わしめたほど。周囲の雑音をモノともせず、素晴らしいキャリアを積み上げてきたトラウトは、今季からチームメイトとなり、“二刀流”実現を目指す大谷翔平投手について「これから楽しい1年になるし、僕らがサポートしていくよ」と全面バックアップを約束した。

 昨年12月にポスティングされる以前から日米の大きな注目を集めてきた大谷は、メジャーで唯一成功した“二刀流”ベーブ・ルースを引き合いに出されるほど。時速160キロを超える速球とシーズン20本塁打の長打力を兼ね揃えた逸材に、大きな期待が寄せられている。だが、現時点ではオープン戦で苦労の日々が続く。ファンやメディアの間では成功を不安視する声が増えているが、トラウトは「それは大丈夫だ」と軽くいなした。

「ショー(大谷)にとって、まだスプリングトレーニングという慣れるための時期だし、長いシーズンには好調不調は付きものだ。これから楽しい1年になるし、僕らがサポートしていくよ」

スランプに陥った時、トラウトが心掛けることとは…

 トラウトがデビューした当時も、トリイ・ハンター、ボビー・アブレイユら長いメジャー経験を積んだベテラン選手がサポートしてくれた。その感謝の思いがあるからこそ、クラブハウスでもグラウンドでも、大谷が新チームに少しでも早く溶け込めるように声を掛ける。

「もちろん期待されていると思うが、まだヤング・キッドだよ。クラブハウスでも彼に馴染んでもらえるように接しているんだ。いい時、悪い時はどうしてもある。それでもポジティブにいてほしい。1つのポジションだけでも大変なのに二刀流に挑戦している彼の苦労は計り知れないが、彼は両方を得意としているんだから素晴らしい。いったんシーズンが始まれば楽しめるはずだ」

 早くも将来は殿堂入り間違いなしと言われるトラウトでも、好不調の波はある。スランプに陥った時、常に心掛けるのが「Stay Positive(前向きであること)」だ。

「明るく、前向きにいることだね。笑ったり、楽しいことを考えたり……。上手くいかないことはたくさんあるけど、チャンスはまた来る。打席に立つたびに、前の打席のことを考えるのではなく、気持ちと頭を切り替えて、これから立つ打席をよくすることだけを考えるようにしているんだ」

 思い通りの結果は出なくても、常に成長するため前に進もうという姿勢を持ち続ける大谷の心に、トラウトのメッセージは深く響き渡りそうだ。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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