【高校野球】戦う度に自信を付けた日本航空石川 強力打線で初のセンバツに挑む

日本航空石川は強力打線で初のセンバツに挑む

昨秋の神宮大会では2試合で計28安打を放つ

 センバツは初出場だが、昨秋の北信越大会では優勝。昨年末に準優勝した同県の雄・星稜の林和成監督が、日本航空石川についてこんな話をしていた。

「航空さんの打線と比べると、ウチの打線は中学生みたい。それぐらい強力打線でした。県大会の決勝では何とか勝てましたけれど…。今の段階では力の差はあると思いました」。

 石川県を牽引している名門の監督がこう漏らすほど、昨秋の日本航空石川の打線はすさまじかった。北信越大会は初戦こそ6安打だったが、以降の3試合では計36安打。さかのぼると、県大会では準決勝、決勝で4番の上田優弥が連続アーチを放ち、上位下位関係なく各打者のスイングが鋭い。神宮大会でも2試合で計28安打と、数字だけを見ても“只者”ではないことが見て取れる。

 日本航空石川が初めて甲子園に出場したのは09年夏。初戦で明桜(秋田)を下して3回戦に進んだが、準優勝した日本文理(新潟)に5-12で敗れた。当時、コーチだった中村隆監督が15年から指揮を執り、昨夏、8年ぶりに甲子園出場を果たす。その初戦の対戦相手は木更津総合(千葉)だった。

「相手は170校を超える学校がある千葉県の代表。すごい相手に勝ってきた学校に対して、ウチなんて地方の、やっと甲子園に出られた学校。どこまで戦えるのかな、と正直思っていました」と指揮官。さらに木更津総合のエースは注目の左腕で、のちにU-18日本代表となった山下輝(法大進学予定)。8回裏まで2-5と劣勢だったが、9回表に4点を奪って試合をひっくり返したのだ。3回戦では優勝した花咲徳栄に3-9で敗れたが、試合を終えてベンチを引き揚げる時、指揮官はあることに気づいた。

「整列して、荷物をまとめていたら3年生で誰も泣く者がいなかったんです。泣くとしたら、ウチの選手は悔しくて泣くと思っていたんですけれど、まだやれる、という気持ちがあったんでしょうね。そこからチームの意識が変わったような気がします」(中村監督)。

女子マネのCA風制服でも注目、入学殺到で女子寮も増築

 全国の強豪相手でも、自分たちはやればできるんだ。そんな意識が芽生えた。それから県大会での戦いぶりも変わった。これまでは甲子園を目指すチームが“甲子園で勝てるチームになろう”が自然と合言葉になった。「ここで接戦するようではダメだとか、ここではしっかり大差で勝ち切らないと、とか。目標が高くなることで選手の目つきも変わりました」(中村監督)。

 昨夏の甲子園レギュラーメンバーが7人も残って挑む今春のセンバツ。経験値というこの上ない武器もあるのだから、昨秋の戦いぶりはフロックではないことを誰もが感じるだろう。この冬は例年以上に雪が多く、能登半島中部に位置するグラウンドでは外でほとんど練習ができなかったが、3月の徳島合宿を皮切りに、急ピッチで実戦を積み上げて本番に備える。

 そしてもうひとつ。昨夏の甲子園では女子マネージャーがクローズアップされ、女子の人気も沸騰した。学校にはキャビンアテンダント科も設置されており、何より制服がCA風ということで興味のある女子生徒から希望者が殺到したという。

 5年前までは女子生徒は1学年に10人ほどしかいなかったが、昨年は80人の女子が入学。クラスが増えたのはもちろん、全寮制のため生活を送る女子寮も増築した。学校としても勢いがとどまるところを知らないが、やはり注目はこの春の甲子園での戦いぶりだ。“初のセンバツ”を感じさせない力強さを武器に、秋に続く旋風を春の舞台でも巻き起こす。

(Full-Count編集部)

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