川崎転落死 初動で後手響く

 2カ月間に3度も続いた連続転落死事件は、県警の本格的な捜査の開始が大幅に遅れたことも公判で明らかになった。内部の情報共有に不手際があり、初動捜査で後手を踏んだことが要因とされる。結果的に事件性の見極めに手間取ったことは、弁護側に無罪主張の根拠としても使われた。■司法解剖、見送り 県警は発生直後、3件とも事件と事故の区別がつかない「変死」事案として処理。管轄する幸署が鑑識活動をしたものの、被害者に目立った外傷はなく司法解剖は見送られ、本部との積極的な情報共有もなされないままだった。■捜査1課の始動は事件発生から7カ月後 転換点は、今井隼人被告が施設内の窃盗事件で2015年5月に逮捕されたことだった。窃盗事件の捜査の過程で、被告が次に起こる転落を被害者の実名を挙げて同僚に“予言”していた事実が判明。3人目の犠牲者が出てから約7カ月後の同年7月、同署から報告を受けた捜査1課が本格的な捜査に着手した。

 捜査の遅れに関して、公判では弁護側が再三にわたって指摘。「3件とも一度は警察が事故として判断した」「ただちに警察が事件と疑うような証拠は現場になかった」などと繰り返し述べ、事件ではなく事故との主張を展開した。■「横の連携、なかった」 当時、捜査指揮に当たった幹部は証人尋問で、検察官から課題を問われこう返答した。「(本部と所轄という)体制の問題もあるが、当日現場に臨場した検視官は3件とも別々の人間だった。横の連携がなかった」

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