大江戸展

 江戸の昔、オランダから長崎の出島へ、そして江戸へと伝わったものの一つに、青色の人工染料がある。葛飾北斎の浮世絵に使われた。広く知られる「北斎ブルー」は「長崎ブルー」と呼んでいいかもしれない▲と、さも知ったふうに書いたが、青の染料が出島から入ったくだりは、東京富士美術館の五木田聡(あきら)館長さんの話の受け売りである。きょう開幕する「大江戸展」は、その美術館が所蔵する名品の数々を展示する▲会場の県美術館できのう開場式と内覧会があり、五木田さんはごあいさつで北斎ブルーと長崎との縁を語られた。北斎の「冨嶽(ふがく)三十六景 神奈川沖浪裏」、海外で「グレート・ウエーブ」と称される傑作は、ただでさえ目を奪われるのに、どこか親しみまでも湧いてくる▲前期展(5月6日まで)では他に、江戸琳派の鈴木其一(きいつ)の手による「風神雷神図襖(ふすま)」が九州で初公開される。内覧会の会場で、隣の人に感想を語る声を耳にした。「風神雷神、見ましたか? ちょっと離れて見たらドーンと来ますよ」▲なるほど、8面のふすまから風神と雷神がドーンと飛び出すような、動きだすような。本物の迫力だろう▲“長崎ブルー”を用いた浮世絵はやがて海外へと渡って、画家たちに大きな影響を与えた。世界と江戸と長崎と。えにしの糸がつながるような。(徹)

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