カネミ油症50年 「過去のこととして消滅するのか」 次世代救済 半分諦め 

 1968(昭和43)年に発覚した戦後最大規模の食品公害カネミ油症事件。高齢化が進む被害者たちが、国などに強く訴えているのが子や孫ら次世代、いわゆる「2世」「3世」の被害実態把握と支援だ。68年当時、汚染油を摂取する母のおなかの中にいた胎児、69年以降に出生した人など、汚染油を直接食べていなくても、多種多様な症状に悩む人は少なくない。だが、救済策はない。
 隠れた存在とも言える次世代被害者は今、どのような意識を持っているのか。長崎新聞社は今月、五島市の協力を得て、認定患者の両親を持ち発覚翌年の69年に生まれた同市内の未認定の男性、女性に加え、男性の母親、市担当者、記者2人を交えて座談会を開いた。2世同士が思いを共有する機会は全国的にも珍しい。
 2世の2人は、「今までに油症について深く考えてみたことはない」などと油症問題とはスタンスを置いて暮らしてきた状況を語り、1世に比べて次世代の油症への関心が低いことを示唆した。
 男性は次世代救済について「半分は諦めている」とし、「自分がこれから油症とどう関わっていくべきなのか、方向性を定められていない」と複雑な胸中を吐露。女性も甲状腺などを患いながらも、「それがカネミと関係あるのか分からない」とする一方、カネミ油症問題が「過去のこととして消滅してしまうのかな」と、不確かな不安感や虚無感を率直に語った。

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