OP戦ラスト登板で中日・松坂が得た収穫と課題 12年ぶりの白星なるか

中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

25日のロッテ戦に先発し、5回6安打3四球3失点の内容だった

 開幕ローテ入りに手中に収めたと言っていいだろう。中日の松坂大輔投手。25日、ナゴヤドームで行われたロッテ戦。オープン戦3度目の先発マウンドに上がった右腕は、予定されていた通りの5回を投げきり93球。6安打3四球3失点。まだ課題の残る内容ではあったものの、可能性を感じさせる出来でもあった。

 投球内容を振り返る。初回の立ち上がり。荻野貴を二ゴロに切ると、藤岡裕はスライダーで遊ゴロ。中村は136キロで右飛に打ち取り、球速は出ていなかったものの、簡単に三者凡退に斬って取った。2回は鈴木に安打を許したが、結果的には3人で片付けて無失点に封じた。

 変化が見えたのは3回だった。1死から田村を四球、田村が走塁死したあとに、加藤にも四球を与えた。無失点だったものの、制球が狂い始めた。「僕の中で変えたんですけど、それが上手く合わなくて。すぐに戻したんですけど、余計な球数を増やすことになりましたね」が、その原因だった。そして4回。先頭の藤岡裕に右中間への二塁打、中村に右前安打を許し、鈴木に右翼線への2点適時打、福浦にも左翼線への適時打を浴びた。この回4安打を集中され、3点を失った。5回も藤岡裕に安打を許したが、盗塁失敗もあって3人で終えた。

 プラン通りの5回を投げ終えた右腕には悲観するところはなかった。「試合前からあまり自分のボール、ストレートが走っていないなと感じたので、うまく変化球を使って抑えていかないといけないなと思っていました。スッキリ抑えたいなと思っていましたけど、それはできなくてちょっと残念ですけど、予定通り5イニング100球を投げられたのは良かった。4回がなければ、もう1イニング全然いけた。(実際に)あったとしても、全然僕はいけたんですけど、監督がやめとけということだったので。シーズンにしっかりもう少し長いイニング投げられるようにしたいなと思います」と語り、時折、笑みを浮かべることもあった。

93球と100球前後の球数を投げられたことが最大の収穫

 最大の収穫は何事もなく、先発投手に必要な100球前後のボールを投げることが出来た点だ。これこそが、この日の登板で最も求められているところでもあった。右肩の故障で苦しんできたことで、キャンプ中から投げる球数を抑えてきた右腕。100球を投げる肩のスタミナは未知のところにあった。「もう1イニングいけた」というように、その点については問題なし。「こういう調整の仕方をするのは僕は初めてだったので、不安もありましたけど、順調に球数を増やすことは出来た。これでいい、と自分に言い聞かせてやるしかないと思っていたので、その通りにやってくることが出来た」と、松坂自身も手応えを感じたようだ。

 3月14日の西武戦(ナゴヤD)で5四死球と荒れたコントロールも、まだ乱れるところはあったものの、修正された。3つの四球を与えたものの、4回に田村に与えた四球はスライダーが際どいところに決まっていた。2打席目に立った際に、田村と言葉を交わしたという松坂は「打席で田村くんと話したときには『手が出ませんでした』と言っていました。本当かどうかは分からないです(笑)」とやり取りを明かしている。

 ストレートの走りも良くない中で試合を作った。「あまりツーシームやカットボールは使わずに、ストレートを中心にと思っていた。良くないストレートを上手く使っていくことを考えて投げていました。カーブはあまり打ってくるボールではない。ポンッと簡単にストライクを取れるようになると、もう少し楽になるんじゃないかなと思いますね」。

 課題もあった。2回、3回にロッテのランナーたちに次々と走られた。決められた盗塁は2イニングで3つ。流石に走られ過ぎた。「僕の癖でどうしても手が先に動いてしまう。それではクイックをしても、あまり意味がない。ランナーは手が動いた時に走れるので」。その癖を「足から動かすように」と修正した5回は、マスクを被った松井雅が藤岡裕の盗塁を阻止。戻ったベンチで森繁和監督から「出来るんだったら、最初からやれ」との注意も受けたという。

 ただ、投球の細かい部分、そして出した走者へ意識を向けられるようになったことが、松坂にとっては大きい。なにせ、右肩の故障でソフトバンク在籍時の3年間はまともに投げることが出来なかったのだ。それが、この段階まで上がってきた。公式戦に投げ、いかに抑えるか、を考えられるところまで来たということが何より大きな意味を持っている。

4月4日の巨人戦での先発が有力視されている

「クイック、スチールに関しては、リハビリで投げることに集中している時に出来るだけ言わないようにしていた。これからは当然、ゲームに入っていく上で、ああいう風にスチールを簡単にされてしまうと、バッテリーもチームも困る。これからは練習の中で取り入れていかなくちゃいけない」

 ロッテ戦後の森繁和監督の言葉からも、投球の細かい部分については重要視していなかったことが分かる。重要だったのは5回100球という、先発投手にとって必要な球数を投げきれるどうか。右肩の故障でソフトバンク時代の3年間、ほぼまともには投げていなかったのだから、まずはそこが求められることは理解出来る。

「ゲームで出てよかったなっていうこと(課題)はほぼ出たんじゃないですかね。シーズンに向けてやることというのは、もう少し自分の状態を上げて行けたらいいかなと思いますね。細かいことを言ったら、キリがないですね。ストレートの質だったり変化球のコントロールだったり、細かいことを言ったらキリがないんですけど、全部ひっくるめて、もう少し全ての球種を良い状態に持っていきたいということですね」

 ある程度の内容も求められる中で、右腕は自分の中で確認すべきことと1つ1つ向き合った。そして、一定の投球内容も示して見せた。公式戦のマウンドは、現実のものとして見えてきた。

 4月4日の巨人戦での先発が有力視されている松坂。公式戦の登板プランは先発後には登録を抹消されて、10日以上の登板間隔を空けて次の登板に備えていくと見込まれるが、間違いなく先発の機会は与えられることになるだろう。いい投球をしても、負けることもあれば、打たれても勝利投手となることもあるのが野球の世界。公式戦のマウンドに上がった先には、NPBで12年ぶりとなる復活の白星も見えてくる。

(Full-Count編集部)

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