《東京#CODE》#「安くていいもの」にだいぶ満足

 先日、あるお仕事で20代働く女性のグループインタビューをしました。25歳から29歳、一部上場企業にお勤めのみなさま、ジャケットをきちんとキレイ目に着こなしています。

 彼女たちに「最近1万円以上の買い物をしましたか?」という質問をしました。そうしたら、5人ともに頭を傾げて、「うーん、ないかもー」という返事。「靴はマルイの楽チンパンプスをECで何度もリピートしています」と。普段着ている服はGUやZARA、ユニクロが多くて、セレクトショップもあまり利用しないそうです。「服や靴に1万円以上だすのってもったいないって思うんです」。にゃるほど。彼女たちはいわゆるインフルエンサー的キラキラ女子ではありません。とても堅実で優秀で、仕事が生活の中心。そういう彼女たちにとって会社服は、手頃でシンプルでコスパがいいものが一番。「GUもZARAも、ちゃんとしているじゃないですか。安くていいものにだいぶ満足しているんです」との答え。

 安くていいものがあふれているから、高いものを買う必然性がないのは当然のことです。ファッションだけに及ばず、たとえば食だってそうです。ランチ弁当や、吉野家も500円で大満足。会社帰りに買う贅沢プリンだって300円以下。たいていの必需品もダイソーで100円均一。とにかくデフレで安い!がすっかり定着した社会なのです。20世紀の話をするのもはばかれますが、今話題のバブリーダンスの80年代当時。編集者だった私は、「49800円の激安スーツ!」という記事を書いたことがあります。彼女たちが着ているあの原色のスーツは当時5万円以上したのです。「安かろう悪かろう」は過去の言葉。企業努力で、平均的な生活はとても安く済む世の中なのです。

 もうひとつ気になることがあります。そろそろ新入社員が街にあふれる頃ですが、最近新人研修の子たちが群れているところに出くわすと、あまりに均一化されて驚くことがあります。あるネットの記事で80年代と昨年の新入社員の写真を並べると、80年代には個性のあふれるスーツを着ていたのに比べて、ダイバーシティを謳う21世紀の今、みんなが同じ服、髪型、靴もバッグも同じなことに愕然としました。これは社会の変化なのでしょうか?そんなことを話していたら20代のアシスタントが、「私たちは、みんなと違うことがとても怖いんだと思います。ライングループ世代ですから」と。一番の恐怖は、ライングループではずされること。だから平均を超えて目立つことは"悪"なんです、と。

 一方で安くて便利なサービスが当たり前の社会で、失うものもあります。例えばNetflix、1ヶ月980円で見放題の豊富なコンテンツ。例えばヒッチコックの作品など、往年の名画で定額プランには入らないものもあります。安さの中には"平均化"という罠があり、出会えない素晴らしいものがその先にあることを私たちは忘れがちです。

 先ほどの女子たちにお金の使い道を聞くと、「旅行!」と言います。国内も海外も、主に女子旅を楽しんでいるのだとか。彼女たちなりに、消費財と経験財は分けて考える。とことんコスパにこだわりながら、実のところ、記憶に残す経験にお金を使うことはそれはそれで悪くない。"お金"が話題の昨今。あなたはどんな使い方をしてますか?

THIS MONTH'S CODE

#ランチ弁当

キラキラ丸の内OLは1000円前後の外食ランチが定番かと思いきや、堅実なお弁当持参派、ケータリングカーで買う500円前後のお弁当派という人も多かった。

#49800円の激安スーツ!

バブル最高潮のこの頃、肩パッド入りで、赤や黄色の激しいカラースーツのブランドは「アルファキュービック」や「ノーベスパジオ」などが中心だった←遠い過去…。

#旅行

とはいえ予算は抑えめ。ヨーロッパ旅行でも予算は20万円以下(お土産も含めて)だという。

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