【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(21)】〈新日本電工〉合金鉄、グループに安定供給 マンガン系国内最大手機能材料・環境・電力も展開

 新日本電工は製鋼副原料に使われる合金鉄の国内最大手メーカー。主力は鋼の強度を高めるマンガン系合金鉄。新日鉄住金グループの鋼材生産を副原料の安定供給で支えている。

 新日鉄住金の発足を受けて、2014年7月に旧日本電工と旧中央電気工業(中央電工)が経営統合(中央電工の子会社化)し、名称を現在の新日本電工に変更した。今年1月にはスケジュール通り中央電工との完全統合を果たした。完全統合とほぼ同時に策定したのが18年から3カ年の中期経営計画。合金鉄、機能材料、環境、電力の4事業をコア事業に、収益力強化を目指している。

 マンガン系合金鉄の国内生産拠点は徳島工場(徳島県阿南市)と鹿島工場(茨城県鹿嶋市)の2カ所で、主力の高炭素フェロマンガンの生産規模は合わせて年間約25万トン。国内最大の規模を誇る。徳島工場では、高級鋼の添加原料として使われる高品質フェロマンガン「SLP」を生産する。

 海外ではマレーシアに進出。香港に本拠を置く資源会社アジア・ミネラルズ・リミテッド(AML)などとの合弁会社「パータマ・フェロアロイ社」(サラワク州)は16年に稼働を開始した。シリコマンガン、フェロシリコンなどを生産。フル生産時の能力は年間約23万トン。水力発電による安価電力を活用した競争力の高いプロジェクトだ。マンガンでは南アフリカのマンガン鉱山の権益約12%を保有する。

 機能材料事業の生産拠点はリチウムイオン電池の正極材を生産する高岡工場(富山県高岡市)、ニッケル水素電池負極材の妙高工場(新潟県妙高市)、アモルファス合金などの原料となるフェロボロンを製造する北陸工場(富山県射水市)など。徳島工場で製造する酸化ジルコニウムも同事業の有力商品だ。

 環境事業は、鹿島工場で手掛ける焼却灰の溶融固化事業と、郡山工場(福島県郡山市)での排水再処理・純水製造事業が2本柱。電力事業は、北海道・様似町で水力発電事業を軸に展開している。再生可能エネルギーの買取制度(FIT制度)を利用して昨年11月、出力4400キロワットの発電設備が稼働。今年12月には同約6200キロワットの設備も稼働予定だ。

 旧日本電工の前身、大垣電気冶金工業所が創業(1925年)してからまもなく100年。その一里塚として策定したのが新中計だ。白須達朗社長は「前中計では事業の選択と集中を推進した。一定の成果をあげることができたが、積み残した課題もある。次の3年間でこれを克服したい」と話す。

 積み残した課題とは「安定収益力の一段の強化立」。2017年12月期は92億円の連結経常利益を計上した(16年12月期は16億円)。ただ、合金鉄の価格上昇に助けられた面が大きく、「本当の実力とは言い難い」(白須社長)。価格変動など外部要因による収益への影響をできるだけ少なくし、逆風下でも安定的に利益を確保できる収益構造を構築する考えだ。

 もう一つの課題が「企業存立基盤の確立」。さまざまな改革を通じて、将来の成長に結びつけようという試みだ。例えば、従来型の改善活動とは一線を画す現場力向上策。「デンコーウェイ活動」と名づけ、今年から全社展開を始めた。人材育成や女性活躍推進や内部統制強化などにも取り組む計画で、一連の改革を通じて「企業価値をさらに高める」(白須社長)方針。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します。)

 企業概要

 ▽本社=東京都中央区

 ▽資本金=約110億円(新日鉄住金約10%)

 ▽社長=白須達朗

 ▽売上高=713億円(17年12月期)

 ▽主力事業=合金鉄、機能材料などの製造・販売

 ▽従業員=957人(連結、17年12月末現在)

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