「リレーコラム」報道に温度差、平昌五輪とパラリンピック アイスホッケーには世界が注目

OAR―ドイツの第1ピリオド、攻め込むOARのカプリゾフ(右)=江陵(共同)

 2、3月は平昌冬季五輪とパラリンピックの取材のため韓国に合計1カ月半滞在した。

 両大会の報道で、日本と外国メディアの温度差が極端にあった。特にパラリンピックでは戸惑うことも多く、どんな観点で報道すべきか、記事の量はどれくらいが適切なのか―。初めて経験する五輪、パラリンピック取材は手探りで歩いているように感じたまま終了し、2年後の2020年東京大会に向けて考えさせられる大会となった。

 五輪、パラリンピックともアイスホッケーが担当競技で、ほぼ毎日江陵のホッケーセンターに通った。

 五輪では2大会連続出場の女子日本代表「スマイルジャパン」の取材とともに男子もカバーした。日本ではそれほど馴染みのない競技だが、冬季大会で男子アイスホッケーは花形競技と言われる。

 今回は世界トップレベルの北米プロリーグNHLの選手が出場していないとはいえ、アイスホッケー大国の米国、カナダやロシアの記者を中心に、大勢のマスコミで取材エリアはごった返した。

 特に男子で優勝した「ロシアからの五輪選手(OAR)」の元NHLスター選手が現れれば、各国の記者が先を争い、韓国や中国の記者は携帯で写真を撮ろうと必死。世界中の注目が集まっていることは一目瞭然だった。

 一方で、3月9日に開幕したパラリンピックでは会場の様子が一変した。記者の通訳や運営を手伝うボランティアの数が明らかに少なくなった。

 取材エリアに行っても2020年を見据えて大勢集まった日本のマスコミ以外は各国1、2社いればいい方だった。決勝後も五輪のようにマスコミが殺到することはなく、優勝した米国の記者はわずか2人だけだった。

 2年後に向けて目の色を変える日本のメディアとはあまりの熱量の差があった。

 我々が異常なのか、それとも世界のマスコミの関心が低すぎることが問題なのか、大会閉幕後もいまだに頭を悩ませている。

 パラアイスホッケーを1年弱取材してきて、純粋に競技として面白いと感じる。氷上で体をぶつけ合う激しさや、スピード感は見応えがある。

 米国とカナダの決勝は試合終了間際に米国が追い付き、延長戦にもつれ込む興奮する一戦となった。

 2020年ではスポーツの魅力を伝える、それでいいのかなと今では思っている。

 もちろん東京パラリンピックをきっかけに、健常者と障害者の相互理解が深まることなど、社会の変化への期待は大きい。私たちマスコミにも大きな役割はあると思う。

 しかし、パラアイスホッケーの選手と話していて「事故にあって大変だったのに、スポーツで頑張る姿に感動した」というフレーズではなく「すごく面白い試合だった。あのプレーが良かった」と言われたいという声ばかりだった。

 筆者もそれが正解だと思う。五輪もパラリンピックもアスリートに変わりはない。原稿でそれを伝えることが自分の責務だと思っている。

星田裕美子(ほしだ・ゆみこ)2010年共同通信社入社。同年12月から大阪支社運動部に異動し、6年間で陸上やプロ野球のオリックスなどを担当。16年12月から本社運動部。東京都出身。

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