設置箇所数半減、省スペース化実現

　大林組はこのほど、耐震性能向上と制震効果が得られる「クロスダンパー」を開発した。ブレーキダンパーとオイルダンパーを交差させて組み合わせた製品で、省スペース化を実現できるほか設置箇所数を従来比半減できるため耐震改修工事のコスト低減と工期短縮も可能となる。内部に展示施設があり設置スペースに制約があった熊本城天守閣の耐震改修工事に採用された。

　本製品は高い剛性を有するブレーキダンパーの主材部に貫通孔を設け、制震効果を発揮するオイルダンパーを貫通させることで同じ軸線上に配置し、ねじれが生じない構成となっている。貫通部に十分な余裕を持たせることでそれぞれの耐震要素は干渉せずに効果を発揮する。様々な大きさや特性を有する地震に対応でき、人命の確保と建物の持続的な利用を両立させる。

　ブレーキダンパーは中小の地震時には高い剛性で耐震性能を向上させ大地震時には揺れのエネルギーを吸収する。一方、オイルダンパーは中小地震から大地震までダンパーとしての効果を発揮する性質を持つ。今回開発した製品はこの２つを組み合わせたもので、従来両者を設置する際には二構面の設置スペースが必要だったが、本製品は一構面に設置が可能となる。このため、設置場所の確保が難しかった建物でも高い耐震性能と制震効果が得られるという。製品の安全性は実大実証実験と数値解析モデルによるシミュレーションで検証、確認している。同社では今後、耐震部材の設置が制限される集合住宅や病院、商業施設などこれまで十分な耐震・制震対策が難しかった建物向けに本製品を積極的に提案していく方針。