【新社長インタビュー】〈日本アドバンスロール・長野秀樹氏〉鍛造ロールで世界最強目指す 新材質開発を加速

――3月に日立パワーソリューションズから鍛造ロール事業を引き継ぎ、専門メーカーとして新たな一歩を踏み出した。率直な思いは。

 「『技術を鍛え、未来を造る』をスローガンに典型的なものづくり企業として成長を目指している。当社の鍛造ロール事業は日立製作所時代から60年以上の歴史があり、設計・開発・製造・販売と保守・サービスを一貫で行ってきた。長年にわたり培ってきた技術は当社の財産であり、営業のフロントも変わっていない。経営と社員が一体となって新たなものづくりにチャレンジしていく。お客様にこれまで同様のご信頼を頂き、新しい会社としてブランドを構築していけると確信している」

日本アドバンスロール・長野社長

――日立グループを離れたことについては。

 「独立した狙いの一つは、鍛造ロール専門メーカーとして事業成長に必要な投資も着実に行い、成長を目指していくことだ。08年に20トンESR(エレクトロスラグ再溶解炉)を導入して以降、大きな設備投資は行っていないが、製品開発や生産技術開発を進めている中で、必要に応じて設備投資も実行していく。鍛造ロール分野における世界ナンバーワン企業を目指すには何をすべきか、という発想に立ち、これまで培ってきた技術力やノウハウを生かしながら、経営資源の投入と技術革新の更なる継続に力を入れていく」

――独自開発の回転付与ESR外層肉盛法を用いて一体構造では製造困難な冷延用ハイスロールの複合化を実現し、累計1千本以上の販売実績を持つなど、豊富な開発実績がある。最近の新ロール開発のトレンドも伺いたい。

 「電磁鋼板はスーパーハイスロール、セミハイスロールが適しているが、自動車用ハイテンや建材用高品質薄板ではハイスロールだけでなく、研削性などの面でハイスロールと一般的なロールの中間製品に対するニーズがある。この領域でいくつかの材質を開発している。日本の鉄鋼メーカーは圧延技術を見ても生産効率向上を見ても、世界のトップを走っておられる。高品質鋼板に適した新しいロールの開発、供給を通じて社会に貢献していきたい」

――本社工場では大型のバックアップロール、中型のワークロール・中間ロール、小型のゼンジミア関係のロールまで手掛ける。総合的な品ぞろえはどう強みにつながるのか。

 「例えばワークロールの材質変更に合わせて中間ロール、バックアップロールを変更するとか、ワークロール、中間ロール、バックアップロールの最適な組み合わせを提案することができる。お客様のニーズに対して幅広く対応できることが強みで、営業、技術も鍛造ロール全般を知っていることで圧延機全体への知見も深められる」

――人材育成で意識的に取り組んでいることは。

 「製鋼工場など職場内でのローテーションだけでなく、製鋼工場と機械工場の間など工程をまたいだローテーションも一部で行っている。ロール技術全体を知る人材を要所で育てて、ロール事業の全体観やあるべき姿を捉えられる人材を増やしていく。経歴と異なる工場に配置された人から斬新な発想が生まれることもある。専門分野に長けた人材と全体観を持つ人材がそれぞれいて、縦横の糸を編むことで全体のパフォーマンスを高めることができる」

 「『行きついた』と思わないことも大事だと考えている。一本道で行きついたと思っても、枝分かれして分岐する道は必ずある。その時に色々のキャリアを積んでいれば、色々の角度で物事を考えることができる。多様性のある組織でありたいし、『ロールの世界は狭い』とは社員に思って欲しくない。鉄は多様性があり、まだまだ進化する。人間も多様性と柔軟性が必要だと考えている」(谷山 恵三)

 プロフィール

 ロール製造部門を幅広く経験した。故星野仙一氏が東日本大震災後に東北楽天イーグルスを優勝させる「信忍」が好きな言葉。「ただ忍ぶのではなく、信じて耐えて忍ぶ。いい言葉だと思いましたね」と。歴史好きでNHK大河ドラマのファン。

 略歴

 長野 秀樹氏(ながの・ひでき)1988年(昭63)室蘭工業大学産業機械工学科卒、日立製作所入社。2010年日立協和エンジニアリング素形材本部セラミックス部長、13年日立パワーソリューションズ素形材本部セラミックス部長、15年素形材本部ロール部長、17年10月素形材本部長、18年3月日本アドバンスロール社長。52歳。

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