韋駄天・日ハム西川が明かす“盗塁哲学” タイトルよりも大切なものとは

日本ハム・西川遥輝【写真:荒川祐史】

2度の盗塁王・西川がタイトル以上に重視するモノ

 昨季39盗塁に成功し、2014年シーズン以来2度目となる盗塁王に輝いた、北海道日本ハムの西川遥輝外野手。NPBを代表するスピードスターは、盗塁に強烈なこだわりを持っている。球界屈指のリードオフマンが明かした走りの流儀とは――。

 2013年シーズンにレギュラーに定着した西川。この年は膝の故障で2か月以上の長期離脱を強いられたが、それでも22盗塁に成功。そこからは4年連続で年間30盗塁以上を記録するなど、その技術に磨きをかけている。

「盗塁に関しては、アウトには絶対になってはいけないと思っている。せっかく塁に出ているんですから、アウトになりにいく必要はない。走らずに止まっていればセーフなわけですから」

 真剣な表情で語る西川にとって、何があっても失敗してはいけないことこそが“美学”だという。昨季は44回盗塁を企図し、39回成功させた。成功率は88.6パーセントと高く、西川の哲学を裏付けるものとなっている。その一方で、数字だけで語れない指標も存在するという。

「意味のある盗塁は必ずあります。5点差付いている場面で盗塁しても、さほど意味はないと思います。たとえば、8、9回にセットアッパーやリリーバーが投げている場面。相手にちょっと気の緩みを感じた時に走る。そういう大事な場面では、バッテリーに大打撃を与えることができる。盗塁の影響で外野が前に出てくれば、その分だけヒットゾーンが広がる。そうなれば自ずと勝てるチャンスが増える。そういう盗塁はチャレンジしていきたいと思っています」

 盗塁数をただ積み上げることを良しとはしない。いかに戦況に影響をもたらし、相手にダメージを与えるか。それが西川の信条だ。

試合終盤で盗塁を決めると「自分の中でもやってやったぞ、と」

「盗塁は数よりも質と相手に与えるダメージ。5回以降はそうなってきます。初回から5回はチャンス拡大という意味で狙っている。5回から9回に関しては質が高まってくる。そういう場面で成功すると、自分の中でもやってやったぞ、という感覚はありますね」

 相手により深いダメージを与えた盗塁こそ、大きな達成感を得るという。

 そして、走りのアーティストは盗塁王のタイトルよりも大事な指標の存在を明らかにした。

「盗塁王が取れなくても、40回走って40回盗塁成功の方が僕は嬉しいです。60回走って40回成功で盗塁王を取るのなら、30回走って30回セーフの方が、僕は嬉しいですね」

 40盗塁を記録し、タイトルを手にしても成功率67パーセントでは達成感はない。たとえ年間30盗塁でも、シーズン成功率を100パーセントにすることこそが、西川の目指す盗塁の理想形だという。

 絶対にアウトにならない。そして、重要な局面で相手のバッテリーにプレッシャーをかけるという美学を、今季も磨き上げるつもりだ。

(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)

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