白銅、金属3Dプリンター造形事業を拡充 ADC12、4月から受注開始

 白銅(社長・角田浩司氏)は金属3Dプリンターによる造形サービスを拡充している。JIS規格のアルミダイカスト材である「ADC12」による受注を4月2日から開始する。日本市場になじみが深いJIS規格材をラインアップに加え、自動車や半導体製造装置、ロボット、各種産業機械市場などの部品開発分野に提案していく。

 白銅は、金属3Dプリンター造形サービスでマルエージング鋼やSUS603(17―4PH)AlSi12などの鋼種を取り扱っていたが、JIS規格の汎用鋼種を加えることが金属3Dプリンター造形事業の普及につながると判断。ダイカスト材として一般的な「ADC12」に焦点を絞り、昨年3月から東京理科大学、キヤノンマーケティングジャパンの3者で共同研究に入り、今年1月までに事業化のめどを立てていた。

 自動車部品や医療部品など各種部品・部材の製品開発をめぐっては、試作品の製造段階で部材作成のために金型を作る必要があり、時間とコストがかかっていた。これを金属積層造形法に置き換えることで、時間とコストの削減が可能になることから、白銅では部品メーカーの試作ニーズを取り込みたい考え。

 またADC12の機械的性質は、鋳造法では耐力が150メガパスカル、引張強度が310メガパスカル、伸びが3・5%程度だが、金属積層造形法(アニールなし、水平)では、耐力309メガパスカル、引張強度が530メガパスカル、伸びが10・3%まで向上することが確認されている。石塚伸一3Dプリンター課長は「より強度が高くなるので、従来ADC12に求められていたニーズとは異なる新たな部品需要も掘り起こしていきたい」と説明する。

 また従来通りADC12の金属積層造形を試作用途で使用したい場合、量産時の鋳造法より強度が向上することが不向きなケースでは、金属積層造形品をアニール(焼鈍)することで鋳造法と同等の強度にすることも可能だ。

 ADC12の試作開発だけでなく、量産品への対応も視野に営業を推進していく一方で、新たな鋼種開発にも意欲的だ。今後も東京理科大やキヤノンMJとの協力関係を維持し、「十分な引き合いがあれば汎用性がなくても鋼種の幅を広げたい」(同)としている。

 白銅は4月11~13日に名古屋で開催される「設計・製造ソリューション展」に出展し、金属3Dプリンターによる造形サンプルなどを展示する。

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