地域で違う「いか焼き」の謎 大阪名物発祥の店・桃谷いか焼き屋に行ってみた

突然ですが皆さん、「いか焼き」と言えばなにを思い浮かべますか?

いかを丸ごと焼いたもの?
それとも、いかを混ぜ込んだ粉もん?

地域で違う「いか焼き」の謎

実は二つとも正解。地域によって、「いか焼き」と呼ばれる食べ物が2種類あるんです。一体どういうことなのか、詳しくみていきましょう。
まずは、2種類ある「いか焼き」それぞれの特徴を比較してみました。

■いか焼き(いかの丸焼き)

【見た目】イカを1匹丸ごと焼いたもの
【味】甘辛い醤油ベースの味付けであることが多い
【作り方】基本、イカを焼いて少々味をつけるだけ。(個人的には七味唐辛子&マヨネーズがあると最高)
【売っている場所】お祭りの屋台など。居酒屋のおつまみとしても人気が高い。
【お値段】400〜700円程度が一般的
【主な地域】東日本全域、九州地方など

■いか焼き(粉もん)

【見た目】薄っぺらいお好み焼き
【味】 刻んだイカが入った粉もの。ソース味。お好みでネギやマヨネーズをトッピング。
【作り方】刻んだイカを混ぜた小麦粉ベースの生地を鉄板で焼き、ソースを塗る。
【売っている場所】お祭りの屋台や居酒屋、大阪府内のデパ地下でも大人気。
【お値段】およそ300〜500円
【主な地域】関西が中心。近畿地方・中国地方などでは「いか焼き」といえばこれ!

なるほど、同じ「いか焼き」でも関東と関西では違った料理が親しまれているんですね。

地域によって、「いか焼き」でイメージする食べ物が違う。このことに私・もーさんが気づいたのは、こむぎこ編集長が書いたこちらの記事を読んだ時でした。

⇒ 【地域の差】上京して10年、関西人がいまだにハマる東京の罠と対処法【食べもの編】

居酒屋で「イカ焼き」なるメニューを見ても、思い通りのものは出てきた試しがありません。一般的に、「イカ焼き」はイカの丸焼きのことのようですが、関西で言う「イカ焼き」はいわゆる”粉もん”のひとつ。イカを小麦粉とたまごを混ぜた生地で平べったく焼いたもの。もちろん味付けはソース!個人的に東京の「イカ焼き」ではなく「焼きイカ」と記してほしいといつも思っています。

「えっなにこれ? あのいか焼き(焼いたイカ)以外にいか焼きっていう料理があるの?!」
東北出身・関東在住、東日本以外に住んだことのない私は驚きました。うどんのおだしや、煮物の味付けなど、関東と関西で食文化が違うということはたびたび話題になりますが、イカ料理の違いは初耳。そして今まで出会ったことのない関西のご当地グルメ・いか焼きへの興味がふつふつと湧いてきました。

「いか焼き調査隊、出動や! 本場の粉もん食ったるでー!!」(※見事なエセ関西弁)

関東在住の私が、関西のいか焼き食べてみた

ということで、やってきました、大阪府!

粉もんの本場・大阪であれば本物のいか焼きに出会えるに違いない。いつもだったらたこ焼きとお好み焼きに一直線ですが、今日のお目当てはいか焼きです。いま気づきましたが、「たこ焼き」がタコ入りの粉もんなら、「いか焼き」はイカ入りの粉もん……となるのは自然なことかもしれませんね。

今回お邪魔したお店はこちら「元祖いか焼き 桃谷いか焼き屋」さんです!

「元祖いか焼き」。そう、ここは大阪のいか焼き発祥のお店なんです。創業は昭和25年、JR桃谷駅近くにある本店と、天保山マーケットプレイス「なにわ食いしんぼ横丁」内にある分店(海遊館店)の、2店舗を営業しています。

今回は特別に、海遊館店にていか焼きの調理の様子を見せていただくことができました。

■「桃谷いか焼き屋」のいか焼きの作り方

いか焼きづくりを実演してくれたのは、気前よく撮影に応じてくださった、爽やか笑顔のコウさん。
まずは流れるような手際の良さで、刻んだイカ入りの生地を適量とり、鉄板の上に乗せて広げます。

そしてそこに生卵をON! たまご入りが元祖のこだわり。軽くつぶしてまぜて、鉄板の蓋をバタンと閉じました。

高温の鉄板で挟んでプレスしているというわけですね。この鉄板は最大4枚焼けるそうで、1分〜1分半ほどそのまま焼きます。

焼きあがったら、バッ!とバットの上に移して、熱いうちにソースを塗ります。

そして目にも留まらぬ速さでくるりと巻き、紙で包んで、出来上がり! わずか1分半ほどのいか焼きショーでした。お見事です!

――あのー、これ、どうやって食べればいいんでしょうか?

コウさんが優しく教えてくれました。
こうやって紙の内側にあるセロファンを少しずつむいて、クレープを食べるような感覚で召し上がってみてください!」

店内にも説明書きがありました。なるほど、こうすれば手も汚れないし、片手で気軽にいただけますね。二重になっていることで、手に熱さが伝わらないのもポイント。

せっかくなので、熱いうちにいただきます!

わぁ、生地がモチモチでおいしい!
鉄板でプレスされていたので、もっと薄くパリパリしているのかと思いましたが意外な食感。そしてプリプリのイカが顔を出します。イカの食感もうまみもしっかり感じられます。その生地とイカをまとめる、甘すぎず辛すぎずさらりとしたソース。これがおいしくないわけがありません!
みんなに愛されるのも納得の味。あっという間に食べ終わってしまいました。

■なにわっ子にも外国人にも愛される、桃谷のいか焼き

桃谷いか焼き屋さんが、なにわ食いしんぼ横丁にお店をオープンしてから15年以上がたちます。地元・大阪の人はもちろん、たくさんの観光客の方にも楽しんでいただいているといいます。コウさんにお話を伺ってみました。

――この大阪生まれのスタイルのいか焼きに驚かれる方もいらっしゃいますか?
「ええ、特に関東の方は『”いかの丸焼き”ではない、こんないか焼きがあるの?』とビックリする方もいます。東京の池袋などで催事をするときは特によく言われますね。」
 
――東京の人にも積極的にいか焼きをPRしていらっしゃるんですね! ちなみに、海外の方の反応はどうでしょうか?
「最近では、海外からのお客様もすごく多いですよ。1日中、外国人の方とお話しているなんて日もあります。みなさんにおいしく召し上がっていただいていますよ。」
 
――外国人の方も、いか焼きを食べにいらっしゃるんですね!
「そうですね、雑誌などを見て、やっぱり大阪に来たらたこ焼き・お好み焼きなどの粉もんを食べたいなと思っていらっしゃる方が多いと思います。」

この日も、平日のお昼前にも関わらずたくさんのお客さんがお店に足を止め、いか焼きを購入していました。
 
「関東風の"焼きいか"ももちろんおいしいですけど、大阪の人にとってはこれが定番の味。みんなに愛されるいか焼きを、ぜひおやつ感覚で、いろんな方に気軽に食べていただけたら嬉しいです!」 
 
コウさん、ありがとうございました!

■進化する桃谷のいか焼きはバリエーションも豊富!

私がいただいたのは一番スタンダードなソースのみの「元祖いか焼き」でしたが、「明太マヨ」や「ねぎマヨポン酢」などバリエーションもたくさん。どれもすごくおいしそうです……。お金のない学生の頃はシンプルないか焼き、大人になったら明太入りを食べるようになった、なんてエピソードもありそうですね(ただの妄想です)。

桃谷いか焼き屋の店頭メニュー

私も、今回は元祖いか焼きだけをいただき、もう一歩大人の階段を上ったらまたアレンジバージョンのいか焼きを食べに伺うことに決めました。その際にはきっと、桃谷駅近くにある本店にも遊びに行きたいと思います!

食いしんぼ横丁で食べられますよ~(人混みの中自撮り)

そんな感じで、すっかり関西式のいか焼きのファンになってしまったもーさんでした。東日本にお住まいの皆さん、いか焼き="いかの丸焼き"しか知らないなんてもったいないですよ!
関東ではイベント以外ではなかなかお目にかかることができないのが残念ですが……やっぱりご当地グルメは、発祥の地で食べるのが一番! ぜひ関西へお出かけの際は一度試してみてはいかがでしょうか。

元祖いか焼き 桃谷いか焼き屋

■桃谷いか焼き屋 海遊館店
【所在地】大阪市港区海岸通1-1-10 マーケットプレース2F なにわ食いしんぼ横丁
【営業時間】11:00~20:00

■桃谷いか焼き屋 桃谷本店
【所在地】大阪府大阪市生野区桃谷2-21-28
【営業時間】 11:00~売り切れ次第終了(定休日:不定休)

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