【高校野球】9四球を許し1失点完投… 並の投手じゃない大阪桐蔭・根尾の凄さ

大阪桐蔭(大阪)が5-1で明秀日立(茨城)を下しベスト8に進出

大阪桐蔭・根尾は今大会初登板で9回4安打1失点も9四球

 第90回記念選抜高校野球は31日、大会9日目を迎え第1試合は大阪桐蔭(大阪)が5-1で明秀日立(茨城)を下しベスト8に進出した。大阪桐蔭は今秋のドラフト1位候補・根尾昂が今大会初登板し9回1失点で完投。春連覇を狙う大阪桐蔭が見せた一戦を沖縄・興南高校で春夏通算6度の甲子園出場を果たし、京都大学などでも監督を務めた比屋根吉信氏(66)に解説してもらった。

——————————————

 今大会初登板、初先発となった根尾は9四球を出しながらも要所を締めた。これだけの四球を与えれば並の投手なら自滅する展開だが、やはりそこは高校球界トップクラスの実力を持つ選手だ。ピンチの場面ではギアを一段階上げ140キロ中盤のストレート、キレのあるスライダーで明秀日立に決定打を許さなかった。

 体にバネがあり、真上から投げ下ろし腕の振りで投げる投球スタイル。このような投手はストライクゾーンの上下で勝負するが、根尾の場合は自信のあるスライダー、落ちる変化球で「上下+左右」で勝負できるのが大きい。ピンチの場面でも顔色ひとつ変えることなく冷静だ。走者を背負っても打たせない、いい意味で“上から”見ることができる投手だ。

 だが、やはり投手のボールではなく野手のボールという印象だ。スピードもありキレも感じられるがボールが軽く、バットに当たれば飛距離が出る。最終回に明秀日立の細川が放ったホームランは左中間最深部まで伸びていった。もちろん打った打者を褒めるべきだが、大阪桐蔭が春連覇を狙うなら少し修正が必要だろう。

 前回も根尾の凄さは話したが、頭一つ抜けた打撃、守備、走塁、そして投球を見せている。この日の5回に見せたレフト前へのタイムリーも逆方向だった。見極めがよく、ボール球を振らない選球眼、そして広角に打ち分ける打撃技術は素晴らしい。好打者でもあり、強打者でもあるということだ。

 柿木、横川、根尾と甲子園のマウンドを経験した先発陣に隙はない。投手陣に十分な休養を与えベスト8からの戦いができる。そして4番・藤原の復活も大きい。7回に放った三塁打は彼、本来の打撃だった。ボールに逆らわない打撃、走塁面でも負傷したことを感じさせない積極的なものを見せていた。

 明秀日立は細川が粘り強く丁寧に投げていた。辛抱強くなげ、大量失点を許さず精神面での強さを感じさせた。課題があるとすれば、少しテークバックが小さく、担いで投げるような投球ホーム。そこを修正できればさらにレベルアップした姿で夏の甲子園に帰ってくるはずだ。

〇比屋根吉信 (ひやね・よしのぶ)

1951年9月19日、兵庫県尼崎市出身。66歳。報徳学園高から大阪体育大に進学。卒業後は西濃運輸で日本選手権にも出場。1976年に沖縄・興南高の監督に就任。仲田幸司、デニー友利ら多くのプロ野球選手を輩出。監督生活10年間で春夏通算6度、甲子園に導き1980年の選手権大会ではベスト8入りするなど同校を強豪校に作り上げた。その後は社会人野球・阿部企業、熊本・有明高の監督を務める。2010年から12年まで関西学生野球リーグの京都大学の監督を務め、田中英祐(元ロッテ)を育てた。

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2