榊原機械が巨大ロボット製作、ものづくりの熱意を形に 産機のノウハウ注入

 産業機械、環境保全機械、遊戯機械(アミューズメント)開発の榊原機械(本社・前橋市、工場・榛東村、社長・榊原一氏)はこのほど自社のノウハウを注ぎ込み、人が操作できる全長約8・5メートル、重量7・3トンの巨大ロボット「LW―MONONOFU」を製作した。実際にすり足歩行や腕の上げ下げ、空気銃の操作が可能で社内イベントや広報活動で活躍している。ボディを構成する鋼板は1・6ミリ以上の普通鋼。ほぼ自社設備で切断、ロール曲げ、溶接を行った。ものづくりの情熱を形にした同社のこだわりを三条市で工具のワークショップ等を通じものづくり支援を行う団体と取材した。

 同社のロボット製作の歴史は05年の2足歩行ロボット「ランドウォーカー」にさかのぼる。愛知万博の年で当時大手自動車メーカーなどがこぞってヒト型ロボットを展示し、パフォーマンスで沸かせた。

 当時、同社ではすり足機構の基本構想を保有していた。開発の南雲正章氏は振り返る。「将来、ものづくりに関心を持ってもらうには子供の頃の実体験が大きい。素材から触れて作る楽しみを、手作りの喜びを少しでも与えたい。鉄の冬の冷たさ、夏の熱さを体感して欲しい。炭素繊維(FRP)、樹脂など他素材への志向もあるが、日本の工業は鉄があることで発展したと思う。そこでロボットはとっつきやすい」。

 加工はほぼ自社で行った。プラズマ切断機1基、プラズマ、ガス切断併用機1基、アイトレーサー1基。シャーリング1基、ベンダー1基、ロール加工機4基。プレス機など自社開発の設備もある。

 溶接は全員がこなす。工場のスタッフは6人。1人が1品の設計、製作、メンテナンス、営業までの責任を持つ。

 使用する鋼板は薄い部分では1・6ミリから厚い部分は16、19ミリ。(畜産用などは厚手の部分で30ミリ強。防錆が必要な部分はステンレスや厚板を使用する)。

 一番の難所は最初の発想だという。デザインは3DCADで描き起こし、社長の判断が出れば試作品なしで一気に実機製作に取り掛かる。

 南雲氏は「社長から『誰かに提案し話を聞いてもらえるような大きな会社ではない。作り上げたところでやっと誰か見てもらえる』と言われた。リスクはあるが自分の教材用としてランドウォーカーを開発。まずは作ってから考えないと結果は何も出ない」。

 開発がスタートする前は受注の保証が欲しいものだが、賭けだった。取材先が広報だけでなく、お客さまとなってレンタルとして貸し出すこともある。新潟県内の商工関係のイベントにも貸出された。 

 ファミリー向け恐竜型ロボットを開発した榊原豪氏は「群馬の地方紙からプログラミング教育の一環で催事に物品協賛するケースもある。開発担当者が会場デモや説明を行う。運搬はノウハウのある近隣の運送会社を通じ物流ネットワークを活用する」と語る。

 工場で実機を目にすると迫力に驚かされ、次いでそれを鋼板で製作した技術と根気に驚かされる。子ども向けロボットを操作させてもらうと操作が直感的で、至る所に安全装置の配慮を感じた。

 「これを本当に作ろうという熱意がすごい」と三条のものづくり団体。

 榊原社長の想いが共有されている。「ひとつ成功したからと言って天狗になって欲しくない。与えられた仕事は常に競争にさらされる。今の職人はまとめる力が必要。素材や技術、制御装置など色々な要素が分からなければ完成できない。自社商品を作るには他社の技術を理解し、間を埋めること」とものづくりの魂を語る。

 ロボット各種は全国の遊戯施設等に販売、レンタルを行っている。

 《購入、レンタル問い合わせ先》

 開発課電話=0279―54―2184。

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