郷土史家・涌田さん夫妻が「相模原事典」出版

 相模原市南区相武台の郷土史家涌田佑さん(89)と元小学校教諭の久子さん(83)夫妻が、同市の歴史や観光、ゆかりの人物など約1300項目を五十音順に分類した「相模原事典」(A5判281ページ)を出版した。約20年かけてまとめた力作で、「辞書のように使ってほしい。子どもたちに相模原を少しでも知ってもらう教材になれば」と市内の市立中37校や図書館に計50部を寄贈した。

 涌田さんは作家・井伏鱒二の研究など文芸評論家としても功績がある一方、市内出身の人物を発掘して多くの著作を発表。久子さんは新磯小、谷口台小などで教壇に立つとともに郷土史を研究し、市史編さん審議会委員も務め、ともに郷土の歩みに目を向けてきた。

 二人三脚による取材成果は「多くの人の目に触れてご高見をいただきたい」と地元の相模経済新聞に2004年から連載。途中で合併があったことから津久井4町分の補訂に時間を要した。また県史や市史など先行文献を利用し、寄せられた意見や欠落部分を補足するなど、内容を充実させた。

 カラー表紙は「一遍聖絵(ひじりえ)」。鎌倉時代の豪族・河野一族の次男で時宗の宗祖となった一遍が、奥州平泉で祖父の墓を供養する姿が描かれた一場面。一遍はその後、相模原・当麻に向かい、庵(いおり)を結んだ場所が現在の無量光寺とされる。そうしたエピソードがふんだんに盛り込まれ、27日に面会した加山俊夫相模原市長も「歴史小説のように読める」と称賛し、長年積み上げてきた努力の成果に感謝した。

 一般販売用(3千円・税別)は残り12部で、品切れの場合はモノクロ仕様の廉価本も刊行する予定。問い合わせは日相出版電話042(748)6020。

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