鉄鋼春闘、賃金改善相次ぐ 約9割で、中小にも拡大

業績回復、人材確保難が後押し

 鉄鋼の春季労使交渉で、組合の基本賃金引き上げ(財源投入)要求に対し、有額回答を示す企業が大手だけでなく中小にも広がっている。基幹労連のまとめによると、3月末までに約100社が回答。このうち9割近くが基本賃金改善で有額回答を示した。業績回復によって賃上げ原資の確保が比較的容易になっていることに加え、慢性的な人手不足に伴い人材確保が急務になっていることが背景にありそうだ。

 基幹労連の鉄鋼・構成組合では今春闘、163の組合が会社側と交渉を持った。このうち154組合が賃金改善を要求。3月末までに回答のあった103社のうち、前進回答を示したのは89社に上った。回答済み企業の87%が2018年度で賃金改善を実施する形。交渉を継続している企業もあり、有額回答はさらに増える見通し。

 鉄鋼各社の労組は今春闘、18年度3500円、19年度3500円の基本賃金改善を要求。第一次回答指定日の先月14日には、高炉大手4社などがそろって各年度1500円の有額回答を示した。大手の回答を受けて、その後も有額回答が続出。大手だけでなく中小企業にも賃金改善が広がっている。

 18年度について高炉大手以外で有額回答を示した企業は、特殊鋼、普通鋼でほぼ100%。このほか合金鉄、二次加工、鉄鋼関連も75~87%の企業が有額回答を示した。高炉大手や特殊鋼は大半が18年度、19年度の2年分を回答。その他の業種では18年度分だけを回答するケースもあったもようだ。

 基幹労連は賃金など重要な労働条件を隔年で交渉する「2年サイクル春闘」を採用、賃金などを交渉する年度を「総合改善年度」と位置付けている。

 前回の総合改善年度(16年春闘)でも多くの企業が基本賃金引き上げを回答したが、関係者によると今春闘は前回を上回るペースという。特徴的なのが製鉄設備の操業・メンテナンスや鋼材物流などを担う鉄鋼関連にも広がっている点。こうした企業は中小が多く、賃上げの動きが幅広い業態に広がっていることをうかがわせる。

 鉄鋼業を取り巻く環境は昨年度下期から好転。大手メーカーを中心に業績回復が顕著となっている。このため中小でも業績が比較的堅調な企業で賃上げ原資の確保が容易になっているもようだ。

 また製鉄所関連企業や物流会社では人手不足が一段と深刻化。人材確保の一手段として賃金改善の重要性が増していることも背景にあるといえそうだ。

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