「われわれを助けて…」外国人にまでカネの無心をする北朝鮮の窮状

3月の中朝首脳会談に続き、今月27日と5月には南北首脳会談と米朝首脳会談が予定されている。朝鮮半島の緊張局面はとりあえず、雪解けに向かいつつあると言っていいだろう。しかし、国際社会の経済制裁は未だに解けておらず、北朝鮮の懐事情は非常に厳しい。

そんな中、北朝鮮の地方当局は外国人を積極的に招き入れ、カネの無心をしている。

中国のデイリーNK対北朝鮮情報筋によると、北東部の咸鏡道(ハムギョンド)の市や郡は、中国人などの外国人を招き入れ、複数の関係者が出迎えた上で食事に招待し、「できるならば、われわれを助けて欲しい」と頼み込んでいるという。

この「外貨稼ぎ作戦」には、保衛部(秘密警察)も税関も協力的だ。通常、陸路で北朝鮮を訪れた外国人は、税関で厳しい荷物検査を受け、入国後は何らかの形で保衛部の監視を受ける。ところが、地方政府の招待で訪問した外国人については、税関検査も緩く、行動に制限を加えられたり、監視されたりすることもないという。

情報筋が市の関係者に理由を尋ねたところ「保衛部はわれわれ対外事業関係者を信用しているからだ」とはぐらかされたという。特別待遇には上部からの指示がある可能性もある。

一方、同じ咸鏡道でも、羅先(ラソン)経済特区ではこのような動きは見られない。外国からの投資を誘致するために指定された経済特区だと言うのに、外国人が投資や援助の話を持ち出すと、「スパイではないか」と疑ってかかるという。一方で、それ以外の地域では外国人に何の疑いも持たず最大限のもてなしをする。これでは「羅先以外は全部経済特区」だ。

北朝鮮政府は、地方の行政当局や各機関に対して「自力更生」を求めている。つまり、予算は配分できないから、自分たちで稼げ」という意味だ。これまでにも、高級レストランやレジャー施設を作って地域の幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)の懐から外貨をかき集めたり、貿易会社を作って中国やロシアとの貿易をさせたりしていた。制裁で貿易がままならなくなった上に、政府はどういうわけか「中国からの撤退命令」まで出している。

にっちもさっちも行かない状況に陥った地方当局は、遂に外国人に助けを求めざるを得なくなったというわけだ。投資話を持ちかけるならまだしも「車はあるがガソリンを買うカネがない、ガソリンを入れてくれと頼み込む」(情報筋)ような有様だ。

懐事情が苦しいのは中央とて同じだ。政府系の財団は、外国人に資金提供を求める見返りとして、革命の聖地である両江道(リャンガンド)にある三池淵(サムジヨン)という湖での水泳の許可するなど、破格の外貨集めプロジェクトを行っている。

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