共生社会実現信じ 本紙読者樋口さんが「HAPPY NEWS」受賞

 幸せな気持ちや新たな気付きを与えてくれた新聞記事と、その理由を記したコメントを募集する「HAPPY NEWS 2017」(日本新聞協会)の受賞者が発表された。神奈川新聞社の岡本晶子記者が書いた「『共生』実現に一丸」(今年1月21日付)にコメントを寄せた川崎市在住の教員樋口秀一さん(49)が、「HAPPY NEWS賞2017」に選ばれた。

 記事は、脳性まひによる四肢体幹機能障害のある男児の両親の「通常学級に通わせたい」という思いを受け止め、保護者や地域住民らが一体となってサポートしている横浜市立小田小学校(同市金沢区)「チームゆうき」の取り組みを紹介した。

 IT関連企業などを経て今春、小学校教員になったという樋口さんは、神奈川新聞の取材に対し「昨今、『共生社会』が声高に叫ばれているが、掛け声だけでなく、実際にできるんだと勇気が湧いた記事だった」と話している。

 「HAPPY NEWS」は2004年度に始まり、今回で14回目。「春の新聞週間」初日となる6日の「新聞をヨム日」に合わせて発表されている。大賞は、朝日新聞「だいすきな木をきらないで」(17年12月3日付)にコメントを寄せた大阪府の小林由香利さん(35)。「HAPPY NEWS賞」は樋口さんら9人が選ばれた。■共生社会実現できる 樋口秀一さん(川崎市在住の教員) 「HAPPY NEWS 2017」が発表され、神奈川新聞社の記事「『共生』実現に一丸」(今年1月21日付)にコメントを寄せた川崎市在住の教員樋口秀一さん(49)が「HAPPY NEWS賞2017」に選ばれた。樋口さんの喜びの声とともに、記事の狙いを紹介する。

 =本記1面に  「すてきな記事に出合え、さらに受賞することができ、大変光栄です」と喜びを語る樋口秀一さん(49)。

 IT業界などを経て今春、川崎市立小学校の教員となった。きっかけは、肢体不自由の子どもたちが参加するサマーキャンプで、介助のボランティアを行ってきたこと。「人と関わる仕事がしたい」と通信制の大学で学び、教員免許を取得したという。

 ボランティア活動を通じ多くの障害児とその家族と接する中で、両親が通常学級に入れたいと思っても、実際はなかなか難しいと感じていた。「共生」という言葉も、どこか理想論のように思っていた。しかし、新聞記事で横浜市立小田小学校の取り組みを知り、考えは変わった。

 「『チームゆうき』はまさに、共生社会を実践している成功事例。トップの決断があれば、こんなことができるのかと驚いた」 正式に教員となった今、改めて思う。共生社会の実現へ、自分にも何かできることがあるのではないか、と。「教育の現場から、障害者への理解を広げるよう努めたい」【推薦コメント】 共生社会というのは理想論だと思っていた。この記事に出合うまでは。

 私は特別支援学校の小学部で障害児の支援を主な仕事としている。小学校には通常学校と支援学校がある。さらには通常学校内には通常学級や支援級と区別された仕組みがあり、障害を持った子を両親が通常学級に入れたいと思っても、担任への負担やほかの保護者の理解が得られるかを考えて、ちゅうちょするのが現実だ。

 しかし一人で課題を抱えるよりもチームで協力し、できる人ができることをひとつひとつ実行すればいいのだ。

 この記事では、校長が学校や地域にボランティア募集を呼び掛けたところ予想を上回る人数が集まったそうで、世の中捨てたものじゃない、そう思えたHAPPYな記事だ。

 校長の英断もそうだが、トップが決断し周りと協力する仕組みを作れば共生社会は実現する。

 4月から教員になるが、「チームゆうき」をこれからも温かく見守るとともに、このムーブメントを推進し各地に広がることを願う。(原文ママ)

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