住友金属鉱山と東北大、共同研究部門を開設 非鉄製錬業の課題研究と人材育成推進

 住友金属鉱山と東北大学は5日、非鉄金属製錬業の持続的発展に向けた研究と人材育成を目的として、東北大学多元物質科学研究所に共同研究部門(非鉄金属製錬環境科学研究部門)を開設したと発表した。期間は18年4月~23年3月の5年で、予算総額は1億5千万円。製錬技術の先進化や国際競争力の強化など業界全体の利益に資する共同研究や、次世代を担う人材教育を推進する。

 また、他大学・他社と連携を深めながら大学の非鉄製錬関連講座の維持・拡大を支援するとともに、技術者の育成・確保への貢献を目指す。

 会見で東北大の矢島敬雅理事(産学連携担当)は「共同研究と人材育成を通じて日本の基幹的産業で、資源・素材の安定供給という重要な使命を担う非鉄製錬業界の発展を支援したい」と挨拶。住友金属鉱山の久保田毅副社長も「日本のものづくり、特に非鉄金属産業の未来を担う人材の育成に資すると期待している」と述べた。

 具体的な研究テーマとしては、各種スクラップを含めた製錬原料に含有する多様な金属を効率的に分離回収する方法やその用途開発、非鉄製錬操業の先進化技術、非鉄金属製錬中間物および廃棄物の有効利用と再資源化に関する研究などを予定。研究成果は学会・セミナーなどで公開し、業界の国際競争力の向上に寄与することを目指す。

 人材育成・確保の面では、共同研究の機会を通じた人材育成に加え、非鉄製錬各社と連携したセミナー・工場見学などで業界の魅力を学生にアピールし、次世代を担う人材の確保・育成を図る。同部門の企業側統括で客員教授も務める今村正樹執行役員は「実際の非鉄製錬の現場に触れる機会が増えることで学生の関心が高まると期待したい」と語り、多元研の村松淳司所長も「早い段階で非鉄業界に接点を持てることは学生にとって利点だし、就職を意識する前段階から非鉄金属を学べることは魅力になるはず」と話した。

 近年は、資源・製錬を専門とする学部・講座・教授が激減していることなどから人材の確保・育成が業界全体の課題となっている。

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