4209日ぶり1軍先発の松坂大輔、5回3失点の投球内容を巡る周囲の評価

中日・松坂大輔【写真:福谷佑介】

森監督は開口一番「そう簡単にいかれたんじゃ困る」

 2018年4月5日。中日ドラゴンズの本拠地ナゴヤドームは、熱気に包まれていた。今季からドラゴンズブルーのユニホームに袖を通した松坂大輔投手の初登板初先発。「平成の怪物」と呼ばれ、数々の実績と名声を残してきた松坂にとって、4209日ぶりとなる1軍公式戦での先発となった。

 結果は5回96球を投げて8安打3失点。たびたび先頭打者を出塁させる苦しい投球ではあったものの、そこはかつてWBC2大会連続MVPに輝いた投手。ここ一番で勝負強い投球を発揮し、要所要所で粘りを見せた。味方の失策もあって自責点は2。1年半ぶりの1軍登板だったことを考えれば、第1歩としてはまずまずの投球だったのではないだろうか。

 試合後、松坂自身は「勝ちにつなげられなかった悔しさしかないですね」と1軍で先発機会を得た感慨など微塵も見せず、勝てなかったことへの悔しさを露わにした。久々の1軍公式戦で悔しさを滲ませた松坂を、果たして周囲はどう見たのだろうか。

 1月の入団テストで松坂獲得にゴーサインを出した森繁和監督は試合後、開口一番に「そう簡単にはいかないでしょ、と。そう簡単いかれたんじゃ困る。苦しんで苦しんでというのは当然あるでしょう」と話し、この日の右腕の投球を受け止めた。ある程度の苦戦は想定内だったということだろう。

 この日は打ち取った当たりが野手の間に飛んで内野安打となったり、味方野手の失策で点を失うなどの不運もあった。ただ、エラーもあれば味方のファインプレーで救われることもあるのが野球。指揮官は「味方の方が足を引っ張ったりしちゃうと、こういうゲームになってしまう。したくてやるわけじゃないんだけどね、今日は大輔が投げることで野手の方が硬くなってしまったかなっていうのはある。やっちゃいけないことをやっちゃう。昨日の巨人と一緒で、ウチも相手に喜ばれることはしちゃいけないと思う」と言いつつも、「そういうのは野球には付き物ですよ。しようと思ってしているわけじゃない」と野球の難しさを口にした。

近藤投手コーチは“前進”と評価「それなりに粘って投げてくれた」

 粘投しながら初先発を無事に投げ終え、ある程度ゲームを作った内容を評価する声もあった。近藤真市投手コーチは「それなりに粘って投げてくれた。本人なりに1軍で投げるのは久しぶりで、その中で良かった点、悪かった点は分かっているでしょう。それを本人がどう生かすか。こちらからアレコレ言うレベルの選手じゃないので。とりあえずは投げられたので(よかった)」と語り、第1段階として1軍の舞台で投げられたことを前進と捉えた。

 では、この日のボール自体はどうだったのか。松坂自身は「いいボール、悪いボール両方ありますけど、全体的にそんなに悪くなかったと思います」と振り返っていた。右腕のボールを受けた大野奨太捕手は「ボール自体は良かったと思います。一通りすべてのボールを使いましたし、その中で投げていくスタイルでやっている。粘っていましたし、走者を出しても、ここというところでああいう投球ができるのはさすがですね。苦しい中でも試合を作ってくれたと思います。(リードとしては)いいもの、いいボールを選択して、有利なカウントで持っていけることを意識して、それに応えてくれたところはあります」と話し、ベテランならではの投球術に手応えを感じたようだ。

 復活への第1歩を記した松坂は、登板間隔を空けるために今日6日に出場選手登録を抹消される予定だ。次回の登板について、森監督は「明日(登録を)抹消します。この6日間の間に投げられる状態になるのかというのを見て、次のことを考えてそこから決めます」と話し、今後、松坂の右肩が中6日のローテに耐えられる状態であるならば、ローテに入ってくる可能性も示唆した。

 大きな注目を集めた移籍後初登板は、復活に向けた確かな光を感じさせた。次なる段階に向けた大きな1歩となるはずだ。

(Full-Count編集部)

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